税金・保険コラム

2023.05.23

労災保険はアルバイト・外国人等の従業員も対象です

みなさん、こんにちは。新型コロナの流行から早3年超となり、やっと世の中も落ち着いてきましたね。最近は、都心の電車の中は時間帯によっては日本人のほうが少ない車両もあるほど、外国人旅行者を目にすることも増えました。本格的に社会が活気を取り戻しつつあると感じます。

経済状況が戻る中で、深刻になりつつあるのが、人手不足の問題です。飲食店やコンビニエンスストアなどでアルバイトをする外国人は非常に多くなっています。日本の少子高齢化が進み人口が減る中、働き手を補うためには外国人の助けは既に必要不可欠になってきています。

そこで今回は、アルバイトは対象外と考えているかたが意外と多い、労災保険(労働者災害補償保険)の基礎知識について解説いたします。

労災保険は国が運営する保険で、労働者を雇用する事業主が加入します。労働者が仕事や通勤が原因で負傷したり、病気になったり、その結果障害が残ったり、亡くなった場合等、被災した労働者やその遺族を保護するため、治療費他必要な給付が行われるものです。
  • 1.労災保険(労働者災害補償保険)の対象になる人は?

    労災保険の対象者は、労働者(従業員)として雇われ、仕事をして賃金(給与)が支払われる人全員です。労働者(従業員)であれば、社員、契約社員、パート、アルバイト、派遣、日雇等、雇用形態や国籍は問いません。事業主は1人でも人を雇ったら、労働保険に加入することが義務化されています。

    外国人は基本的に就労可能なビザを持っていないと日本で仕事をすることはできません。これは日本人が外国に行っても同じですね。ですので、外国人にアルバイトで働いてもらう場合等は、持っている在留カードを確認する必要がありますし、マイナンバーも提出いただくのが原則です。但し、労災は不法就労(働けるビザがない)でも労働者で賃金を支払われている人であれば対象になります。
    万が一ビザを確認しなかった、あるいはビザ切替中等で有効なビザを保持していない場合等も考えられますが、働いている人が仕事中に怪我をした場合は、雇っている事業主に責任が及びます。前提として事業主が労働保険に加入していなければなりませんが、労災保険は申請すれば適用されます。

  • 2.労災保険の対象にならない人(原則)

    (1)法人の役員

    法人の代表取締役や代表権を持つ役員は労働者ではないので労災保険の対象外です。
    取締役等の役員で他の労働者(従業員)と同様に仕事をしていて、賃金(給与)が支払われている人は、その部分については労災保険の対象になります。役員報酬部分は対象外なので、役員報酬のみを受けている人は対象となりません。

    (2)個人事業主や業務委託者

    自分で商売をしている個人事業主や士業、事業者から受けた仕事をしていても、業務委託や外注として働いている人は対象外です。近年ではフードデリバリーや小口の貨物配達員、パソコンを使った請負の仕事などは、自由な働き方ができ、時間に縛られない等の理由から、雇用されない働き方を選ぶ人が増加傾向にありますが、雇用されている場合との違いには注意が必要です。

    (3)事業主の同居親族

    法人の代表取締役等の事業主と同居している親族は原則対象外です。
    ただし、同居の親族でも、事業主の指揮命令に従い、始業終業の時刻、休憩、休日、賃金の支払等について他の労働者と同様に就業規則の適用を受ける者については、労災保険の対象になります。

    (4)海外で働く現地採用者

    日本の会社で採用されていても、現地採用され現地で働く人は対象外です。
    ※日本から海外赴任し、海外派遣者の特別加入手続をして承認されている期間は対象です。

  • 3.労災保険の保険料

    全額事業主(会社)が負担しますので個人負担はありません。
    事業主はパート・アルバイト等非正規で働いている人の人件費を含めて、毎年4月1日から翌年3月31日までに支払った給与に基づき、労働保険料を計算して国に納付することになっています。
    アルバイトも対象外ではありませんので、ご注意ください。

  • 4.2の労災保険の対象外の人も「特別加入」すれば労災保険の対象になれる

    (1)中小事業主等の特別加入

    法人の役員・個人事業主・同居親族でも事業主が労働者を雇用していて、自身も他の労働者と同様に仕事をしている場合には、労働保険事務組合に加入し特別加入することで労災保険の対象者になることが可能です。

    (2)一人親方等の特別加入

    労働者を雇用していない場合でも、以下の業種について一人親方等の特別加入団体を通じて、労災保険に任意加入することが可能です。保険料は自分で負担することになります。

    ① 個人タクシー事業、個人貨物運送業者 ※令和3年9月1日から自転車利用が追加
    ※コロナ禍を経て、フードデリバリーの仕事をする人が激増し、その方たちの事故が相次いだことから、①の労災保険の特別加入枠が拡大されました。
    ② 建設業の一人親方等
    ③ 漁船による自営漁業者
    ④ 林業の一人親方等
    ⑤ 医薬品の配置販売業者
    ⑥ 再生資源取扱業者
    ⑦ 船員法第1条に規定する船員
    ⑧ 柔道整復師                ※令和3年4月1日から
    ⑨ 創業支援等措置の高年齢者         ※令和3年4月1日から
    ⑩ あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師 ※令和4年4月1日から
    ⑪ 歯科技工士                ※令和4年7月1日から

    (3)特定作業従事者等の特別加入

    以下の業種の特定作業従事者とされる人の特別加入については、特定加入団体を通じて労災保険の加入手続きを行います。保険料は原則自分で負担することになります。

    ① 特定農作業従事者
    ② 指定農業機械作業従事者
    ③ 国または地方公共団体が実施する訓練従事者
    ④ 家内労働者およびその補助者
    ⑤ 労働組合等の一人専従役員(委員長等)
    ⑥ 介護作業従事者および家事支援従事者
    ⑦ 芸能関係作業従事者      ※令和3年4月1日から
    ⑧ アニメーション制作作業従事者 ※令和3年4月1日から
    ⑨ ITフリーランス        ※令和3年9月1日から

  • おしまいに

    先日、農作業中のかたが着ていた服が機械に巻き込まれ、大事故になったというニュースが伝えられました。機械に手を挟まれたり、巻き込まれたり、大怪我に見舞われる悲劇を聞くことがあります。工場や建設現場などで働く外国人も増えていることから、機械の使用方法や禁止行為など絵でわかるようにしたり、手順方法などは丁寧な説明が安全管理上必要でしょう。

    安全教育も徹底して悲しい事故が起こらないようにしたいですね。

社会保険労務士
木村 晃子
さいたま総合研究所人事研究会 所属
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