税金・保険コラム

2007.10.04

遺言・相続(5)「相続欠格」と「相続廃除」ついて

皆さん、こんにちは! 皆さんの生活の上で相続問題は大切な事柄です。
この遺言・相続に関するコラムでは、引き続き必須の基本知識を中心に取り上げて参ります。
今回は、「相続欠格」と「相続廃除」について述べてみたいと存じます。

1.「相続欠格」について

いきなり強烈な事項を採り上げますが、相続人の中で、下記のような行為をした人物は、自動的に相続権を失うことが、民法で列挙されております。これを「相続欠格」といいます。

  1. 故意に被相続人または先順位もしくは同順位の相続人を故意に殺害し、または殺害しようとして刑に処せられた者。
  2. 被相続人が殺害されたことを知っていて、これを告発、告訴しなかった者。
  3. 詐欺または強迫によって、被相続人が遺言をし、これを取り消し、またはこれを変更することを妨げた者。
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に遺言をさせ、これを取り消させ、または変更させた者。
  5. 遺言書を偽造、変造、破棄、隠匿した者。

上記のうち、1.の刑に処せられた者には、執行猶予つきの受刑者も含まれます。
2.に関しましては、判断能力のない人間、殺害者が自分の配偶者や親または子といった直系血族については除外されています。これらの近親者にそこまで求めるのは酷だというわけです。
また、「相続欠格」は、上記の法定事由が必要で、たとえば単なる親不孝などは入りません。しかしながら、法定事由があれば、他の相続人や第三者でも「相続欠格」を主張することが可能です。

2.「相続廃除」について

被相続人は、遺留分を有する相続人のうち、生前に自分に対して虐待をし、もしくは重大な侮辱を加えた者、その他著しい非行があった者がいた場合、家庭裁判所に申し立てを行うことができます。当該申し立てが認められれば、その者の相続権を失わせることができます。これを「相続廃除」といいます。
また、遺言で「相続廃除」を求めることもできます。この場合は、生前に信頼のおける人に、遺言執行人になってもらう内諾を得ておきます。被相続人が亡くなった場合、遺言に基づいてその遺言執行人が家庭裁判所に申し立てを行うことになります。
「相続廃除」は、「相続欠格」と比較して、世の中ではけっこう例が多いと存じますので、「相続廃除」と判断されるケースをもう少し具体的に述べてみましょう。
前述のように、「著しい非行があった場合」とは、たとえば被相続人の息子が親の財産を無断で売り飛ばしたり、お金を何度も勝手に持ち出しては浪費を重ねたり、盗みやわいせつ行為をして警察沙汰になって親の名誉を傷つけ、面子をつぶしたといった行為をした場合です。いわゆる世間でいう悪ガキ、放蕩息子の類の行為といってよいでしょう。
ただ、この「相続廃除」は家庭裁判所が事実関係や程度を調査した上で、審判や調停を行って初めて成立します。
また、「相続廃除」は被相続人が生前に取り消すことも、遺言で取り消すこともできます。
「相続欠格」は、被相続人の意思に係わらず、相続人の資格を自動的に失いますが、「相続廃除」は、家庭裁判所が認めれば、被相続人の意思により自分に迷惑をかけた人間を相続人から除外できるわけです。もっとも、「自分の子が可愛いので許そう」ということであれば、それは自由です。
しかしながら、他の相続人が、「あいつは、まったくけしからん。親が許しても俺たちが許さん!」とばかり、被相続人の意思に反して、家庭裁判所に廃除の申し立てをすることはできません。あくまでも「相続廃除」ができるのは被相続人のみです。他の相続人が自分の相続分を増やそうという意図で特定の相続人を廃除させようとするケースも考えられ、法律はそれを避けようとしたことも推測されます。

「相続欠格」と「相続廃除」の留意点

「相続欠格」と「相続廃除」をされた者ははなはだ不名誉ですが、その子供は、親に代わって代襲相続(注1)をすることが可能です。次回の遺言・相続に関するコラムで採り上げる「相続放棄」の場合に、放棄をした者の子供は相続ができないのと違うところです。

注1)代襲相続とは、たとえば被相続人の子供が死亡していない場合、孫が代って相続したり、同様に被相続人の父母がいない場合、祖父母が相続するように、先の世代や後の世代の者が本来の相続人に代って相続することをいいます。

社会保険労務士、行政書士
小柴 正晴
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