自慢の郷土料理・地元メシ

Vol.4 信州・奈川に伝わるとうじそば

奈川のふるさとの味

信州は、言わずと知れたそばの名産地。昼夜の寒暖差と清らかな水、澄んだ空気に恵まれたこの地では、香り高いそばが育まれてきました。
その食べ方もまた多彩で、粉の挽き方や打ち方はもちろん、地域ごとに独自の文化が息づいています。
松本市の山あいに位置する奈川は、そうしたそば文化を色濃く残す里のひとつです。ここは「とうじそば」という独特の食べ方の発祥地であり、「奈川在来」と呼ばれる希少な在来種でも知られています。市街地から車でおよそ1時間。標高1000メートルを超える山深い地に、そばの里の風景が広がります。
この地に古くから伝わる郷土料理が「とうじそば」です。
その名は、そばをつゆに浸して温める「湯じ」や、「投汁(とうじ)」に由来するとされ、いずれも“浸す・温める”という意味を持ちます。

心づくしのごちそうそば

根曲がり竹で編んだ「とうじ籠」にそばを入れ、具だくさんの温かい鍋に浸していただくのが、とうじそばの特徴です。しゃぶしゃぶのようにさっとくぐらせることで、そばはほどよく温まり、香りが引き立ちます。
出汁はかつおと昆布をベースにしたやさしい味わい。そこに鶏肉の旨みが加わり、深みのある風味を生み出します。
具材には、ワラビやタケノコ、ウド、シイタケ、油揚げ、ねぎなど、山里ならではの食材が並びます。秋にはきのこが加わり、季節ごとの恵みも楽しめます。

具の旨みが溶け込んだ汁とともに、温めたそばをいただく一杯は、素朴ながら滋味深く、体の芯まで温めてくれます。
あらかじめ固めに茹でたそばを小分けにするなど手間のかかるこの料理は、かつては祝い事や法事など、特別な日に振る舞われる「ハレ」の食でした。
山里のもてなしの心が息づく、あたたかなごちそうです。

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