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旅・レジャー

2010.09.09

香り高き秋の味覚を訪ねる旅 ~新そば漫遊~

実り多き季節の到来を告げる「新そば」

実り多き季節の到来を告げる「新そば」江戸の昔から、「蕎麦の花見は散るが楽しみ」という句があるように、日本人は古くから食べ物としての"そば"をこよなく愛してきました。さまざまな料理が味わえるようになった現代においても、そばを好物に数える人は少なくないはず。あの清々しい風味とのど越しは、他の食べ物では決して代替がきかない、唯一無二の味わいと言えるでしょう。
さて、そんなそば好きたちが心待ちにしていた季節がいよいよやってきました。夏の暑さが徐々に薄らぐこの時期、ついに新そばが収穫の時を迎えるのです。

そばの実は、初夏と秋、年に2回収穫されるのが常ですが、秋にとれるそばは香りや味がより素晴らしく、この季節にとれるそばだけが「新そば」を名乗ることを許されます。新そばが食べられるようになる時期は、品種によっても異なりますが、北海道でだいたい9月頃。その後、"そば前線"は徐々に南下して、11月頃になると全国の多くのそば店で、香り高き新そばが味わえるようになります。

美味しいそばの条件...それは「挽きたて」、「打ちたて」、「茹でたて」の三たて。そばは劣化が早く、粉にした瞬間から味や風味が落ち始めるため、その旨さを余すところなく満喫するためには、なるべく早く食べたほうがよいのです。この三たてに加えて「採れたて」にもこだわってこそ、真の"そば道楽"。風情あふれる秋の味覚"新そば"を求めて、収穫最盛期を迎えた生産地を訪ねる旅に出かけましょう。

何軒でも心ゆくまで楽しもう!そば三昧の旅へ

気候もよい秋晴れの日に、新物を求めて"そばどころ"を訪ねる――。そば好きならば一度は体験してみたい、憧れの旅。全国にそばの名店は数あれど、地元産のそば粉を用いたそばが食べられるという店はさほど多くありません。お腹だけでなく心も満足できる、おすすめの場所を、いくつかご紹介いたしましょう。

  • 幌加内(ほろかない)そば(北海道幌加内町)
    幌加内(ほろかない)そば(北海道幌加内町)北海道幌加内町は、そば生産量日本一を誇る町。2,700ヘクタールものそば畑を有し、9月に入るといっせいに収穫が始まります。この時期には、日本最大規模のそばの祭典「幌加内そば祭」も開催され、道内はもとより道外からも多くの観光客が訪れるのだとか。
    そば栽培に適した冷涼な気候や水はけのよい土地質で、風味の高い良質なそばが収穫される幌加内町。なかでも幌加内町が長い年月をかけて開発した新品種「ほろみのり」は独特の甘みと食感をもった味わい深い逸品です。この地を訪れたら、ぜひオリジナルブランド「ほろみのり」を味わってみてください。
    北海道一人口が少なく、日本一人口密度が低い町としても知られる幌加内町。新そばを楽しむ傍ら、豊かな自然や広大な大地など北海道らしい景色にどっぷり浸れます。のんびりと心洗われる、大人の休日にぴったりな場所です。

  • 戸隠(とがくし)そば(長野県長野市)
    戸隠(とがくし)そば(長野県長野市)戸隠神社の参拝客への振る舞い料理として、古くからそば文化を持つ戸隠。そばどころ信州の中でも、ひときわ美味しいといわれるそばの名産地です。戸隠は昼夜の温度差が激しい高冷地のため、霧が発生しやすい土地柄。こうした場所で育ったそばは、"霧下(きりした)"と呼ばれる貴重品で、そば通をもうならせています。
    戸隠そばには、他にはない特徴がいくつかあります。そばはほとんど水切りせず、「ぼっち盛り」と呼ばれる独特の盛り方で供され、薬味には辛味大根。香りと旨みが強い戸隠産のそばを、もっとも引き立てる食べ方です。山の澄んだ伏流水で茹で、洗っているため、キリリとした食感も素晴らしく、忘れがたい味わいです。
    10月も下旬になると、神社周辺の多くのそば屋が競うように新そばを始めます。せっかくなら数軒巡って、味くらべをしてみたいもの。11月には神様に新そばを奉納する神事「蕎麦献納祭」が古式豊かに行われ、観光客も多く訪れます。

  • 出雲そば(島根県出雲市)
    出雲そば(島根県出雲市)日本三大そばのひとつ「出雲そば」。そばの実を皮ごと挽いてそば粉とするため、香り高く、黒っぽい色合いが特徴です。県内の生産量はさほど多くないものの、出雲のそば文化の歴史は古く、江戸時代にまでさかのぼります。いまでも、風味豊かで良質なそばが収穫される土地として有名です。
    出雲そばといえば、三段に重ねた朱塗りの漆器に盛り付けた「割子そば」。そばを汁につけるのではなく、器に汁をかけるという食べ方も独特です。江戸時代の趣味人たちが野外で食べるための"そば弁当"の形式が、いまに受け継がれているのです。出雲そばは、香り高くコシが強いため、のど越しを楽しむというより、しっかりと噛みしめてそば本来の味を堪能する方がよいのだとか。
    八百万(やおよろず)の神々が出雲に集う10月を、出雲の地では「神在月(かみありづき)」と呼びますが、このころ新そばが旬を迎えます。毎年10月末に行われる「神在月出雲そばまつり」も盛況です。出雲大社周辺はもとより、島根随一のそば産地である奥出雲まで足を伸ばせば、収穫したての滋味豊かな新そばを味わえます。

近ごろ、日本のそばの生産量は減少傾向にあり、国内消費の約80%が輸入によってまかなわれているのが現状です。せめて新そばの季節くらいは、国内産にこだわってみませんか。過ごしやすい気候の秋は、ドライブや電車の旅がより楽しみやすくなる季節。ぜひ、そばの里へ足を運んでみてください。

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