旅・レジャー

2010.06.10
東京都足立区にある、真言宗豊山派の寺院「五智山遍照院總持寺」。通称「西新井大師」で広く知られているこの寺院は、その昔、空海(弘法大師)が関東巡錫(じゅんしゃく)でこの地を通った際、悪疫流行に悩む人々を救うために十一面観音をつくり、天長3年(西暦826年)に寺院を建立したのが始まりだと伝えられています。地元では親しみを込めて「お大師さま」と呼ばれ、一月は初詣、二月は節分やだるま供養、三月から五月にかけては縁日に合わせて植木市が催されるなど、一年中多くの人で賑わう場所でもあります。
参道には、うなぎ屋やお団子屋など風情ある構えのお店が軒を連ね、参拝客の目を楽しませてくれます。江戸時代からイボ取りの霊験あらたかとされる「塩地蔵」をお目当てに訪れる参拝客も少なくありません。早春には可憐な梅の花が咲き、季節が移ろうごとに濃い桃色の山桜、満開の藤、約150種7,000株の牡丹が見られるなど、花の名所としても名高く、そぞろ歩きを楽しむのにうってつけの散策場所として、人々に愛されているのです。
花の見ごろが過ぎ、緑が青々としてくる毎年7月中旬~8月上旬には、趣ある「風鈴祭り」が開催され、全国各地から集められたさまざまな種類の風鈴が、そこかしこでちりんちりんと涼しげな音色を奏でます。透明感あふれる涼しげな江戸風鈴、竹炭素材を使った和テイストのもの、動物をかたどった愛らしいものなどなど、個性豊かな風鈴をのんびり眺めていると、日ごろのストレスが静かに溶け消えていくような気持ちになれるはず。今夏は、この風流な行事を見学しに、西新井大師を訪れてみてはいかがでしょうか。
夏の風物詩である風鈴。日本では古くから軒先などに吊り下げ、その音色で涼を感じるために使われてきましたが、もともとは、邪気をはらい、吉凶を占うために、中国で生まれた道具でした。風鈴は仏教などとともに中国から日本へ伝わりましたが、その当時ガラス製の風鈴は大変高価なものだったので、大名や豪商たちの間で珍品としてもてはやされ、お屋敷の部屋の中に吊り下げられていたと言います。
時代が流れ、ガラス製品の製造技術も進んだ江戸末期頃、きらきらと輝く透明なガラス製の風鈴はついに庶民の手にも届くものになりました。自然の風が吹くたびに微かに揺れる様子、その清らかな音色は、蒸し暑い夏を涼しげに彩ってくれるものとして人々の心を捉え、夏に欠かせない風物詩として一世を風靡(ふうび)したのです。そして江戸末期から明治にかけて、風鈴はめざましい勢いで発展し、さまざまな地域で特色を持ったものが作られるようになりました。
風鈴の音色は、素材によって大きく異なります。たとえば銅や鉄などの金属製なら鋭く澄んだ音色を、陶磁器製なら丸みのあるやわらかな音色を、ガラス製なら繊細かつ硬質な音色を奏でます。また、同じ素材を使っていても、その大きさや形状によって、音色の大きさや響き方は微妙に異なります。自分の理想の風鈴を見つけるためには、いろいろなタイプの風鈴を実際に聞き比べてみるのが一番。西新井大師の「風鈴祭り」へ足を運べば、きっと気に入るものがあることでしょう。夏の気配をすぐそばに感じながら、風に揺れるたくさんの風鈴を愛で、耳を澄ませ、自分好みの風鈴を見つけてくださいね。