旅・レジャー

2008.12.11
年の瀬が迫る師走。普段の忙しさに加えて、年末特有のあわただしさが
そんな時こそ、ほっと一息、気持ちを切り替える旅に出るのはいかがでしょうか。
たとえば、自然に溢れ、静かな環境の中で自分とじっくり向き合えるような...そんな癒しの場所として、今回おすすめするのが「宿坊」です。
「宿坊」とは、一部の寺社に併設された宿泊施設のこと。もともとは修行中の僧侶が寝泊まりをする場所として存在していたものですが、時を経て現代では、多くの宿坊が一般参詣者の宿泊を受け入れるようになりました。
寺の宿泊施設というと、決まりなどが厳しかったり、部屋の設備が整っていなかったりするのではないかと心配になるかもしれませんが、決してそんなことはないのでご安心を。
決まりごとがあるとしてもそれは門限を守るなどといったあくまで常識的なものですし、佇まいは質素でも冷暖房器具や浴場などが完備されているケースがほとんどです。
では、普通の宿泊施設と違うのは、どんなところなのでしょうか?
実は、それこそが宿坊の魅力。多くの宿坊では、普通に生活している上ではできない経験をさせてくれるのです。
たとえば、寺の僧侶たちが毎朝行う勤行(ごんぎょう)。一般的に勤行は非常に早い時間帯から始められるので、通常の観光客は見学することができません。しかし、宿坊に宿泊すれば、開門前の早い時間帯から境内にて僧侶たちの唱える貴重なお経や説法を生で聞くことが可能なことも。境内に国宝・重文級の建築物や庭園を持つ寺院であれば、心身に早朝のすがすがしい空気を纏いつつ、それらを見て回ることもできるでしょう。
施設によっては、座禅や写経、写仏などを体験できる場合もありますし、朝食で精進料理を味わえるところもあります。一般の旅館やホテルでは絶対に味わえない、宿坊ならではの特別な体験は、きっと心身をリフレッシュさせてくれるはず。あなたも、試してみませんか?
さて、宿坊といえば高野山などが有名ですが、実は東京にも、一風変わった宿坊体験ができる場所があるのです。それが、奥多摩にある「御岳山」(みたけさん)。古くから霊山として崇められた御岳山の、標高929mの頂上付近には「武蔵御嶽神社」の社殿があり、神社に至る参道周辺にはなんと20軒以上もの神社に属した宿坊があるのです。
「僧侶のためであったはずの宿泊施設「宿坊」が、なぜ神社にあるの?」と疑問を感じるかもれしませんが、それにはきちんとした理由があります。
その理由とは、宿坊が普及した頃の日本の宗教が、神仏混淆(しんぶつこんこう)として仏様と神様への信仰を同一視する形であったこと。当初、御岳山に寄せられた信仰は古来から日本にあった土着信仰に仏教や神道が混じった「山岳信仰」でした。
しかし、江戸中期頃から全国的に神仏分離の動きが見られるようになり、明治初期に維新政府から神仏分離令神仏判然令が出されてその分離が決定的となったとき、当時の御岳山で信仰されていた「御嶽蔵王権現」が神社へと道を定め、その名も「武蔵御嶽神社」と改めたため、それゆえに現在では珍しい「神社の宿坊」が残ることとなったのです。
さて、歴史の話はこの辺にして、現在の御岳山でできる宿坊体験について話を戻しましょう。奥多摩にある御岳山は、美しい大自然に囲まれています。宿坊は山頂付近にあるため眺めが素晴らしく、夜には関東平野の夜景や夜空に輝く星を、朝にはご来光を拝むことができるでしょう。昼間には、小鳥たちのさえずりを聞きながら森林浴やハイキングを楽しむのもいいかもしれません。
宿坊によっては、滝行などの修行プランを用意しているところや、ご祈祷やお祓い、瞑想や呼吸法の指導をしているところもあるので、興味がある場合は参加してみるのがおすすめです。
宿坊は、せわしない日常から心を切り離したい時に最適の場所。心身を清め、生まれ変わったような気持ちになりたい時は、ぜひ宿坊を訪れてみてください。