趣味・教養

2012.01.16
1983年の日本初演から28年間、国内のミュージカル上演数としては最多記録を更新中の劇団四季『CATS』。1981年にロンドンのウエストエンドで初演された本作は、英国の作家T・S・エリオットの原作を、アンドリュー・ロイド=ウェバー(作曲)とトレヴァー・ナン(演出)という黄金コンビで舞台化し大ヒット。1983年のトニー賞では10部門でノミネート、最優秀ミュージカル脚本賞や最優秀ミュージカルオリジナルスコア賞など7部門で見事栄冠に輝いたモンスターミュージカルなのだ。劇団四季版としては、これまで9都市17公演地で上演され、昨年10月には通算8,000回、総入場者数は800万人超えを記録。現在も横浜公演2周年を迎えた「キヤノン・キャッツ・シアター」で上演中だ。

物語はロンドンの街角にあるゴミ捨て場。月の輝く夜、たくさんの "ジェリクルキャッツ" たちが、年に一度の舞踏会にやってくる。"ジェリクルキャッツ" とは、人間に飼いならされず、逆境に負けず、強靭な思想と行動力によってしたたかに生き抜いている猫のこと。その夜は長老猫が最も純粋なジェリクルキャッツを選ぶことになっていた。夜を徹して歌い踊る猫たちは、再生と新しい命を得られるただ一匹の猫を目指して語り続ける。やがて夜明け前。ついに選ばれし一匹の猫の名前が・・・。
ミュージカル『CATS』の魅力は、やはり猫たちの人間味あふれるキャラクターと、子どもでも分かるシンプルなストーリーながら哲学すら感じさせるその世界観にある。観客は大人も子どもも、猫たちの中に必ず自分に似ている人を見つけられるはずだ。例えば、ジェリクル族のリーダーであるオス猫のマンカストラップ。あるいは浮気性だがセクシー、メス猫たちに人気のラム・タム・タガー。そして若い時は美しかったものの、今では他人に受け入れられることだけを望んでいるメス猫のグリザベラ・・・。本作を何回観ても新しい発見があるのは、観た年齢ごとに共鳴できるキャラクターがあるからだろう。
その世界観を体ごと味あわせてくれるのが、初演から続くキャッツシアターの構造。現在の「キヤノン・キャッツ・シアター」でも、舞台全体を覆うセットと客席(全席1階)が一体となって、まるで自分が猫たちの隣人になったような気持ちにさせてくれる。「メモリー」「ジェリクルソング」など、世界的ヒットとなった楽曲の数々と目をみはるダンスに酔ううちに、物語はあっという間に結末へ。観終わった後に、観客はさまざまなことに気づかされ、胸にポッと温かい灯火がともる。それこそがミュージカルの、そしてこの名作の底力なのだ。