趣味・教養

2010.07.15
名門ハプスブルク家の終焉に、19世紀ヨーロッパの波乱の歴史を絡めて描くグランドミュージカル『エリザベート』。今も欧州の人々に人気の皇妃エリザベートを主人公に、黄泉の帝王トート(ドイツ語で"死")が彼女を愛することで帝国を滅亡に導くという新解釈が特徴の本作。ミュージカルには珍しいロック調ながら美しい旋律が印象的な楽曲も話題となり、1992年のウィーン初演以来、欧州で大ヒットを記録。日本では1996年に宝塚歌劇団が、2000年には東宝製作版が上演され、"明るく健康的なミュージカル"とは対極の妖しく耽美的な魅力でメガヒットとなっている名作だ。

Photo by Leslie kee
幕が開くと、そこは死者がうごめく黄泉の国。裁判官は皇妃エリザベート(朝海ひかる/瀬奈じゅんのダブルキャスト)を暗殺した無政府主義者ルキーニ(髙嶋政宏)への尋問中だ。エリザベートの死は、彼女自身が黄泉の帝王トート(山口祐一郎/石丸幹二/城田優のトリプルキャスト)を愛したからだと叫ぶルキーニ。裁判官は早速、1853年のオーストリア・ハプスブルク帝国へと遡る。政情に疲れきったオーストリア皇帝フランツ(石川禅)が、自由奔放なエリザベートを見初めたところから物語は始まる。確かに、エリザベートの生き生きとした魂に惹かれたのはフランツだけではなかった。結婚式の夜に彼女の前に現れたトートは、お前が本当に愛するべきは私なのだと言い放つが...。
『モーツァルト!』、『レベッカ』などのヒット作で知られるミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽)コンビに、いまや日本ミュージカル界を牽引する演出家・小池修一郎というヒットメーカーたちで贈る本作。耳に残るエモーショナルな音楽と巧みなストーリーはもちろん、これほどまでに大きな支持を得る理由は、エリザベートという女性の生き方とトートの妖しい存在感にあるだろう。皇室に嫁いだものの旧式な生活に収まりきらず、"本当の自分"を探し続ける彼女の姿は現代の女性なら誰しも覚えのある感覚。それも本作でのトート(死)はビジュアル系ロックアーティストさながらの美しいたたずまいなのだから、ロマンスの要素も充分。その甘い誘惑に迷いながらも毅然と立ち向かう彼女に、観客は深い共感を覚えるのだ。
すでに7度目の再演となる今回は、宝塚の元トップスターでカリスマ的な人気を誇る瀬奈じゅんに、劇団四季を退団して活躍の場を広げている石丸幹二、さらにTVドラマでもおなじみのイケメンで若手実力派の城田優らが初参加。豪華キャスト陣で綴るステージに全身で浸る快楽を、本作でぜひ体験してほしい。
| 日程 | 8月9日(月)~10月30日(土) |
| 会場 | 帝国劇場(東京都) |
| 劇作・脚本・作詞 | ミヒャエル・クンツェ |
| 作曲 | シルヴェスター・リーヴァイ |
| 翻訳・演出 | 小池修一郎 |
| 出演 | 朝海ひかる・瀬奈じゅん/山口祐一郎・石丸幹二・城田優/ 高嶋政宏/石川禅/村井国夫/寿ひずる・杜けあき/ 田代万里生・伊礼彼方・浦井健治/他 |