趣味・教養

2008.11.17

ブロードウェイ・ミュージカルの名作は数多くあるが、中でも特別な一本として今も若者を中心に熱い支持を受けているものといえば、この『RENT』だろう。19世紀のパリに生きる芸術家たちを描いたプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を下敷きに、本作では舞台を20世紀末のニューヨークに置き換え、貧困やエイズ、ドラッグ、さらに時代が移っても変わらぬ愛のかたちを、時に残酷なまでに生々しくえぐり出す永遠の名作である。
物語は映像作家のマーク(森山未來)と、友人で元ロックバンドのボーカル、ロジャー(K/RyoheiのWキャスト)が暮らすニューヨーク・イーストヴィレッジの古いロフトを中心に展開。ロジャーは元恋人がエイズで自殺した時から引きこもりになり、自身もHIVに感染してからは、死ぬ前に一曲だけでもすばらしい作品を作りたいとだけ願っている。最近はダンサーのミミ(DEM/Jennifer PerriのWキャスト)に惹かれているものの、なかなか気持ちを伝えられないでいた。一方のマークも、恋人のモーリーン(Mizrock/望月英莉加のWキャスト)を女性弁護士に奪われ、家賃(レント)滞納で電気まで止められてしまう。そこへ親友のトム(米倉利紀)が彼らに電話をかけてくるが...。
ドキュメンタリー作家を志すも、生きるために意に沿わない仕事を選ぶマークには、ドラマ『危険なアネキ』や映画『世界の中心で、愛をさけぶ』のほか、舞台でも活躍中の森山未來。その同居人で、死と隣り合わせで生きるロジャーには、'05年のドラマ『1リットルの涙』の主題歌「Only Human」がスマッシュヒットを記録したソウル出身のKと、ヒットメイカー、m-floファミリーの一人として全国ツアーにも参加しているRyoheiのWキャストで挑む。またキーマンであるトムには、日本のR&Bシンガーの先駆け的である米倉利紀。一年のほとんどをニューヨークで過ごしている米倉だけに、リアルな演技が期待出来そうだ。
その他のキャストも海外でのボーカリスト経験者やニューヨークでレッスンを積んだ者など、個性的な実力派がズラリ。日本版に恥ずかしくない顔ぶれが揃った。それもそのはず、初めに記したように『RENT』は伝説のミュージカル。それは作詞・作曲・脚本を担当したジョナサン・ラーソンが、'96年1月のプレビュー前日に35歳の若さで急逝したことから始まる。彼の遺志を継いで幕を開けたオフ・ブロードウェイでの公演は大ヒットを記録し、続くブロードウェイ公演ではピュリッツァー賞のドラマ部門、トニー賞のミュージカル部門作品賞、音楽賞、脚本賞、助演男優賞の4部門を獲得するという、まるで『RENT』の世界そのままの奇跡が起こったのだ。「No day but today(未来もない過去もない。今日という日、精一杯愛し、生きるだけ)」というリアルで力強いメッセージに、観る者は必ず心を打たれるに違いない。
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