趣味・教養

2012.01.11
世界のファッションシーンをリードするモードの国フランス。その一方で、古くから女性を美しく彩る装飾として、繊細な伝統手芸の技も大切に受け継がれてきました。特に、16世紀の貴族社会から庶民へと広まったレース手芸は、現代においても国内のみならず世界中のファンを魅了してやみません。そんなフランスから発行された、本物のレース片が貼りつけられている珍しい切手をご紹介いたします。
フランスにおけるレースの歴史は16世紀、イタリアからアンリ2世に嫁いだカトリーヌ・ド・メディシスがフランス宮廷に持ち込んだことに始まり、一気に貴族社会の流行となりました。その勢いたるや、身につけているレースの豪華さが、宮廷社会でのステイタスシンボルになっていたほど。とはいえ当初はイタリアからの輸入がほとんどで、王族をはじめ借金をしてまで高価なレースを購入する貴族が続出。なんと、レースの購入資金で国庫が破綻するのでは?という危機感もあったほどだとか。レースが、宝石と並ぶ贅沢品であったことが伺えるエピソードです。
こうした経緯もあり、ルイ14世の時代には王立レース製作所を設立。イタリア、ベルギー、イギリスの技術やデザインをとり入れるとともに、フランス独自のレース文化を開花させたのです。
こうした中、いち早く庶民に浸透していったのは、ボビンレース。ボビンと呼ばれる糸巻きを使って柄を織る手法です。織り台の上に型紙を固定して、図案に合わせて止めたピンに糸を絡ませながらレースを織り上げていきます。両端をボビンに絡ませた糸をピンで交差させることで、型紙に描かれたデザインどおりの模様が作り出せるのが魅力。「平織り」「綾織り」「重ね綾織り」の3種類の織り方を組み合わせて、複雑で繊細なレースが生み出されます。
生産地として有名なのは、世界遺産「スペインのサンティアゴ・デ・コンポステーラにいたる巡礼路」の宿場町でもあるル・ピュイ・アン・ヴレイとその近郊。街には今もボビンレースの店が軒を連ね、一目一目、手際よくレースを織る職人の姿が見られます。
近代フランスのレース編み技法で忘れてならないのが、リバーレースです。「リバーレース」という呼び名は、イギリス産業革命の真っ最中である1813年にジョン・リバーが開発した編み機に由来します。ごく細い糸を撚(よ)り合わせて編んでいくもので、繊細で優美そのもの。華やかな表情とレースの縁にでるヒゲが特徴です。
機械編みとはいえ、芸術作品とも言えるリバーレースを編み上げるには、熟練の技と優れた美的センスが必要。誕生以来、上品な美しさが女性の心をつかんで離しません。
トーションレースやラッセルレースなど、編み機を使うレースはいくつもありますが、これらに比べてリバーレースは使用できる糸数が15,000から20,000本と最も多くなっています。そのため、立体的で複雑な模様を作り出せるのが特徴。編み機は19世紀前半、ドーバー海峡に面したフランスのカレーに初めて持ち込まれ、稼働生産が始まりました。使用糸の多さから、編み速度は極めて遅く、大量生産できるレースとは一線を画しています。手編みでは不可能なほどの複雑さ、そして繊細な美しさで、「レースの女王」と称されているのです。
現在では世界中のリバーレースの8割がフランスの生産ですが、リバー編み機の機械自体はすでに製造されていません。そのことから、リバーレースの価値は高まる一方。とりわけ歴史の古いカレーには今も編み機が集中しており、この地方で作られるリバーレースは最高級品です。ブライダル衣装やオートクチュールに使用されることでも知られています。
伝統工芸品でもあるレースが、宝石のように珍重されてきたフランス。見た目に惹きつけられるだけではなく、芸術を追求するために膨大な手間暇がかけられていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
そんなフランスのレースを直接切手に貼りつけてデザインの一部とした小型シート。ご紹介したル・ピュイ・アン・ヴレイやカレーのほか、針と糸で編みこんでいくニードルレースの産地アランソン、黒いリバーレースが特徴のシャンティイなど、4つの産地からレースをセレクト。長い歴史が育んだ技術と芸術的センスは、見れば見るほどため息が出そうな美しさです。本物のレース片を少しずつ切り出しているだけに、厳密に見るとまったく同じ柄でないところもレア感たっぷりです。ご自身のコレクションとしてだけでなく、手芸が趣味のご家族へのプレゼントにもぴったりではないでしょうか。
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切手部分にそれぞれ本物のレースを貼付した小型シート4種セット。切手図案・産地は、ボビンレース(ル・ピュイ・アン・ヴレイとその地域)、リバーレース(カレー)、リバーレース(アランソン)、リバーレース(シャンティイ)となっています。
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