趣味・教養

2011.08.10
19世紀イギリスの詩人であり、思想家。そして「モダン・デザインの父」として知られるウィリアム・モリス(1843~1896年)。今年2011年はウィリアム・モリスが、「モリス商会」の前身である「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立して150年目を迎えます。今回はこれを記念して発売された、モリス商会ゆかりのクラシカル・テキスタイルがデザインされた美しい切手たちをご紹介します。
近代デザイン史上に大きな影響を与えたウィリアム・モリスは、ロンドン郊外の裕福なブルジョア家庭に生まれました。豊かな自然に囲まれた大邸宅で育ったモリスは、中世のロマンチックな美に憧れながら、独特の感性を養ったと言われています。
やがて、聖職者を志してオックスフォード大学に入学したモリスは、気鋭の社会評論家であったジョン・ラスキンの著書を愛読。ラスキン言うところの「芸術と職人が未分化で、創造と労働が同じ水準に置かれ、人々が日々の労働に喜びを感じていた中世ゴシック時代を理想とする」という思想に傾倒していきます。友人であるエドワード・ジョーンズとフランスのゴシック建築研究の旅に出た後は、思想の実践者としての道を本格的に模索し始めました。ラファエロ前派の美術家バーン・ジョーンズや画家ロセッティらと交流を強め、"暮らしと共存する芸術性" をさらに追求するようになっていったのです。
1859年にジェーン・バーデンと結婚したモリスは、新婚生活を送るための「レッドハウス」という芸術的な新居を建築。バーン・ジョーンズやロセッティも協力して装飾や家具をあつらえたこの家は、当時 "世界一美しい家" と呼ばれていたそうです。
これがきっかけとなり、1861年に友人たちとともに「モリス・マーシャル・フォークナー商会」を設立。"芸術と仕事、そして日常生活の統合" という理念を掲げました。1875年にはモリス単独の管理になり、「モリス商会」と改称。1880年代に入ると、モリス商会と同じ理念を掲げる工房も増え、彼らの活動を総称して「アーツ・アンド・クラフツ運動」と呼ばれるようになっていきました。
「If I can(もし私にできるなら)」をモットーに、暮らしの中に存在する "デザインできるものすべて" に芸術性を取り入れようとしたモリス。特に力を注いだのは、自然の樹木や草花などをモチーフとする壁紙や布などインテリア製品のパターン製作です。当時のイギリスは、産業革命を経て、工場で作られた大量生産品が当たり前になりつつあった時代。反工業化の精神を反映した、モリスの作品からあふれる芸術性と自然観は、のちのアール・ヌーヴォーへと繋がっていきます。
晩年は、ロンドン郊外ハマースミスで「ケルムスコット・プレス」という出版社を設立し、美しい装丁の書籍も刊行したモリス。独自の感性から生み出される世界観と、繊細な手仕事に最後までこだわり、美を追求し続けました。
樹木や草花など自然の情景がデザインされるテキスタイルは、当時の人たちを魅了しただけではなく、いまでも根強いファンを獲得し続けています。カーテンやクッションなどの生地デザインは、現代の日本でも大変な人気です。
今回ご紹介する切手のデザインに採用されているのは、モリスとその仲間たちがデザインした、歴史に残る "暮らしの中の芸術" たち。「美しいと思わないものを家に置いてはならない」と語ったモリスの精神が宿った、いつの時代も変わらぬ輝きを放つパターンばかりを集めました。世紀を超えて愛され続けるモリス・デザインの魅力を、ぜひ切手の世界でもお楽しみくださいね。
協力:株式会社郵趣サービス社
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