趣味・教養

2011.06.22
ユネスコの世界遺産条約に基づいて登録される「世界遺産」。ユネスコでは世界遺産を「人類共通の "たからもの"」と位置づけており、国境を越え世界のすべての人々が共有し、次の世代に受け継いでいくべきものとしています。遺跡や建築物、街並みや自然そのものの景観など、さまざまなものが登録されていますが、特に多くの世界遺産に出会えるのがヨーロッパ。今回はその中から、スペイン、ハンガリー、そしてフィンランドの世界遺産を中心にデザインされた美しい切手をご紹介します。では、切手の世界でヨーロッパの世界遺産めぐりに、出発いたしましょう。
世界遺産は、各国に点在する「顕著な普遍的価値」を持つ遺跡、景観、自然などを対象に登録され、景観や環境を保全することが義務付けられています。中でも文化遺産と呼ばれる創造的な世界遺産は、特にヨーロッパに集中しているそうです。さらにこのヨーロッパ各国でも、イタリアに次いで世界遺産の多い国がスペイン。その長い歴史の中で多様な宗教や民族の文化が融合し、常に独自の発展を遂げてきた国です。だからこそ、さまざまな価値ある創造物が今も人々の暮らしの中に息づいているのでしょう。
「ウベダとバエーサのルネサンス様式の記念碑的建造物群」は、アンダルシア地方のハエン県にある隣接する二つの都市「ウベダとバエーサ」の建造物群です。"双子の町" とも呼ばれるウベダとバエーサは、16世紀にイベリア半島でもっとも早くルネサンス様式を取り入れた町づくりをしたことで知られ、「アンダルシアの隠れた宝石」とも形容される美しさ。ウベダでは大聖堂やバスケス・デ・モリーナ広場、バエーサはハバルキント宮殿と中庭、サン・フランシスコ教会、サンタ・マリア広場に面する大聖堂などが有名です。
スペイン西部、スティーリャ・イ・レオン州サラマンカは、スペイン最古の大学、サラマンカ大学を擁する大学都市。中世時代には、最先端の知識を得るために欧州各国から優秀な学生が集まったとか。世界遺産となった「サラマンカ旧市街」には、バロック様式、ゴシック様式、ロマネスク様式、ルネサンス様式、イスラム様式など、さまざまな時代、文化の歴史的建築物が立ち並んでいます。切手デザインでは、ローマ橋から大聖堂を臨む代表的な風景が採用されました。
同じくカスティーリャ・イ・レオン州で、アービラ県の県都にあるのが、「アービラの旧市街と塁壁の外の教会群」。町全体が巨大な岩山の平らな頂上に位置し、海抜も1,117メートルと高いため、厳しい気候となっています。この街で見るべきものは、なんといっても11世紀に作られた全長2,500メートルにも及ぶ城壁。88の物見やぐらを持ち、イスラム教徒の侵攻に備えたといいます。
世界遺産ではないものの、スペインには見るべき風景が満ち溢れています。カスティーリャ=ラ・マンチャ州シグエンサにある「シグエンサ大聖堂」もそのひとつ。荒涼とした丘陵に忽然と現れるシグエンサの街の発祥は、ローマ時代にまでさかのぼるといいます。中世の面影を色濃く宿した小さな街で、12世紀に作られた大聖堂は、ロマネスク様式とゴシック様式が融合した壮大で美しい建造物として特に有名です。
そして、ローマ、エルサレムと並び、世界3大巡礼地のひとつに挙げられるのが、「サンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路」。実に800キロメートルあまりにも及ぶ、壮大な道のり全体が世界遺産に登録されるのは、極めて珍しいことだそうです。
「ドナウの宝石」と称されるハンガリーにも、国内各地に世界遺産が点在しています。ハンガリー北東部に位置するワインの産地で、28の村と7,000ヘクタールのブドウ畑からなるトカイ地方。広大なブドウ畑の文化的景観が世界遺産に登録されたという、これも大変珍しい例です。トカイワインといえば、ルイ14世をして「これこそ王様のワインにしてワインの王様なり」といわしめた、甘く濃厚な貴腐ワインが有名。美食へのあくなき追求が幕を開けた17世紀以降変わることなく続く、穏やかで美しい風景が訪れる人を迎えてくれます。
ワインといえば、「赤貴腐」と呼ばれる極上赤ワインを生産しているエゲルも、見逃せません。1552年に城を攻めてきたオスマントルコの大軍隊が、エゲル城の兵士が赤ワインで口の周りを赤く染めている様子を見て、「牡牛の血を飲んでいる」と恐れをなしたという逸話が残っており、現在も「牡牛の血(ヴィカベール)」という銘柄のワインが有名です。第1回ブダペスト世界ワイン博覧会記念に発行された切手は、それぞれのデザインに、自慢のワインと産地の歴史的風景が盛り込まれています。
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さて、ところ変わって北欧フィンランド。「スオメンリンナの要塞群」は、住所上では首都ヘルシンキ市内ですが、所在するのは海の上。6つの島をつないで築かれた巨大な海上要塞です。フィンランドがまだスウェーデン領だった18世紀、バルト海の覇権をもくろむロシアからの防衛線となるために、当事最先端の技術を集めて作られました。現在は要塞跡地として一般開放されており、船で気軽に渡って島々を散策することができます。フィンランド独立に至る道を見つめてきた歴史的価値の高い世界遺産は、世界中から訪れる観光客はもちろんのこと、地元フィンランド人たちの行楽地としても人気を集めています。
そして、ボスニア湾に面した古い港町ラウマ。世界遺産に登録されたのは、この旧市街にあるフィンランドの伝統的集落です。ここでは、艶やかに彩られた美しい木造の建築物が500以上も軒を並べているのを見ることができます。重厚な石造りの建造物が多いヨーロッパでは珍しい光景ですが、林業が主要産業のフィンランドでは、かつてはどの町でも木造の建物が主流だったそう。旧市庁舎(ラウマ博物館、Vanha Raatihuone)や、かつての船長の家マレラ・ハウス(Marela)は、海上交易で街が栄えた時代を垣間見ることができる名所です。
交易と戦争、侵略と独立を繰り返しながら、独自の文化を育んできたヨーロッパの街。後世に残したい価値ある風景が一堂に会するのも、切手の世界ならではです。それぞれのお国から発行された自慢の風景は、お手元でご覧になるたび新しい発見に出会えるはずです。
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