趣味・教養

2011.05.25
グルメ、アート、ファッション・・・フランスと聞いて、思い浮かぶイメージは人それぞれだと思います。しかし、洗練された豊かな文化に彩られた国であることは、間違いないでしょう。特に芸術分野に関しては、国家政策として政府が援助を主導するほど重要な扱いです。「美」への高い意識とこだわりこそ、フランスらしさと言えるのかもしれません。今回は、まさに "フランス的美意識" を地で行く、こだわりの切手シートをご紹介しましょう。
ルネサンス時代から、フランスには芸術を大事にする風潮があったと言われています。王侯貴族たちは絵画を収集したり、芸術家のパトロンになったりすることが当たり前で、優れた芸術家たちは富裕層の支援の下で作業に没頭することができました。そしてその気質は、そのまま現代における文化政策とよばれる事業に引き継がれています。
国家をあげての芸術支援・保護によって芸術文化を発展させてきたフランス。国の隅々にまで文化的な素養が行き届き、生活の場にもアートが息づいているのです。そこで生活するフランス人たちの「美」に対する感覚や意識が並外れているのも当然のことでしょう。
美のためには、ときにストイックにもなれるのがフランス人。たとえば南フランス地方では、オレンジ色の屋根と黄色の外壁の家が立ち並ぶ街並みが有名ですが、実はこれ、条例で厳しく家屋の外観や色が決められているからです。北フランスに行くと、白壁だけの街もあるのだそうです。芸術的な街並みのためには、好き勝手な家を建ててはいけない・・・これがフランスのスタンダード。首都パリでもこうした条例はさまざまに存在し、派手な色や電飾を使う看板はダメ、高層ビル建築もNG、個人宅でも洗濯物を外に干すべからず、といった制約がいくつも存在しています。
また、とある著名な日本人デザイナーが、以前フランス式に自宅を建て替えた際の面白いエピソードがあります。玄関ホールの吹き抜けに、フレスコ画(ヨーロッパのお城の天井などに描かれる宗教画)を描くことになり、本場フランスの職人を招いて作業を依頼したときのこと。フランス人のフレスコ画職人は、工期の遅れも気にせずたっぷり時間を使って緻密に描いたのち、「朽ちた感じを出すため」と、なんとそのうち7割も削ってしまったのだとか。
削るくらいなら、初めからその部分は描かなければよさそうなものですが、フランス人の職人に言わせれば、「細かい部分まですべて描いてから削らないと、本物にならない」。フランス人の美へのあくなき追求心には、まったく驚かされます。
さて、フランス人の "芸術的こだわり" は、切手の世界でも例外ではありません。
2010年より、四大元素(自然界を構成する空気・火・土・水の4つの元素)をテーマに発行されているフランス「切手の日」切手は、昨年2010年が「水」、そして今年2011年は「土(=大地の恵み)」がテーマです。今回の図案は、イチゴの苗と花、果実とその断面を描いたデザイン。国立自然史博物館の専門画家として活躍したアルフレッド・リオクルーが描き、フィリベール・ピカールが彫刻した版画「フレジエ・リュビ」(19世紀・国立自然史博物館所蔵)が元になっています。
では、この切手デザインのどこに "芸術的こだわり" が生きているかというと、まずは「イチゴの香り付き」。香りつき切手は以前もご紹介したことがありますが、実は今回の驚きはそれだけではありません。この切手は、なんとシート裏面にもイチゴの図案入り。果実とその断面の図案が表面と同じ配置(切手部分の苺の実の裏側に断面の図案、シート地の苺の実の断面図案の裏側には実の正面図案がくるような配置)で印刷されていることが、一番の注目ポイントです。
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貼ってしまえば見えなくなる裏面にまで描かれた、凹版+グラビア印刷で印刷された細密画。ご紹介した数々のエピソードからも、「こんなことを考えつくのはフランス人ならでは」と、感慨に浸ってしまいそうですね。
世界中探してもなかなか見つからない、「両面印刷切手」。ご自身のレアなコレクションにはもちろんおすすめですが、お友だちやご家族に差し上げても、センスのよさを発揮できそうです。
協力:株式会社郵趣サービス社
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