趣味・教養

2009.05.27
子どもから大人まで、いくつになっても夢中になって読みふける本のジャンルのひとつにミステリーがあります。本を開けば、怪事件、難事件を鮮やかに解決する名探偵の活躍、お話の中で繰り広げられる複雑な人間模様が私たちを捕らえて離しません。今回は、その時代の習慣や風俗などの描写も興味深いミステリーを著した作家や、出版時から現在まで色あせることのない、魅力的な登場人物たちがデザインされた切手をご紹介しましょう。
アメリカの詩人であり小説家、エドガー・アラン・ポーは1841年、「モルグ街の殺人」を発表しました。この作品は今日における推理小説の元祖といわれ、"意外な犯人"、"犯人を追い詰める名探偵C・オーギュスト・デュパンの活躍"、"合理的な推理と謎解きで怪事件が解決される筋書き"といった近代的な推理小説の要素がもれなく組み込まれた手法は、その後発表された著名な推理小説に採り入れられ、まさに「推理小説の父」としての、アラン・ポーの存在を位置づけています。
また、物語に科学的事実を取り入れストーリーを形成するテクニックは、かのジュール・ベルヌも注目。近~現代SFの発展の礎を作ったことでも知られているのです。
そして、今年2009年のポー生誕200年にあたり、母国アメリカから記念の肖像切手が発行されました。切手のシート地には、恋人を失い悲嘆にくれる主人公のもとに、言葉を操る謎めいた大鴉が訪れ、主人公を追い詰めていくという恐ろしいストーリーで彼を一躍有名にした物語詩「大鴉(おおがらす)」をイメージした、怪しげなシルエットが描かれています。
ちなみにポーの切手は今回が2度目の発行で、没後100年にあたる1949年に、今回のような肖像切手が発行されています。同じ肖像画を基にしながらも、時代を感じさせるデザインの違いにも注目してみてください。
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かたやイギリスで「推理小説の父」と呼ばれるのは、アーサー・コナン・ドイル。彼が産み出したのは、現代でも「シャーロキアン」と呼ばれる熱烈なファンを持つ「名探偵シャーロック・ホームズ」です。
エディンバラ大学で医学を学び、当初は捕鯨船や貨物船などの船医として働いたのち、眼科医として活動していたドイルでしたが、自身の診療所が流行らず、患者を待つ間に小説をしたためたそうです。1887年には最初にホームズが登場する「緋色の研究」を発表、1890年に発表した「四つの署名」でその人気が爆発し、彼の名声は不動のものとなりました。
その後、次々と発表された『シャーロック・ホームズ』シリーズは、イギリスのみならず世界中の読者に受け入れられて熱狂的な人気を誇りました。ですが、もともと推理小説よりも歴史小説やSFが書きたかったドイルは、本意でない分野でばかり評価が高まることに疲れ果て、ホームズと決別しようと決心。1893年の「最後の事件」でホームズと宿敵モリアーティ教授を滝つぼに落とし行方不明にすることで、シリーズを終えました。
しかし1905年には、ホームズの死を惜しむ読者の要望に応える形で「シャーロック・ホームズの帰還」を発表、復活させています。
この「最後の事件」発表100年に合わせ、1993年10月にイギリスから発行された5種連刷切手には、「ライゲートの大地主」「バスカヴィル家の犬」「6つのナポレオン像」「ギリシャ語通訳」「最後の事件」の名場面が、活き活きとしたタッチでデザインされています。なお今年はコナン・ドイルの生誕150周年にもあたり、誕生日はなんと今月、5月22日でした。150周年の誕生月に、シャーロック・ホームズ切手をご自身のコレクションに加えるというのは、シャーロキアンならずとも良い記念になりそうです。
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フランスの新聞紙上では1859年から70年にかけて、ピエール・デュ・テライユの手により、のちに全22巻もの大シリーズとなった推理小説、『怪盗ロカンボール』シリーズが人気を博していました。このように、元々フランスで推理小説が市民権を得ていた伝統に加え、イギリスのホームズ人気が各国の小説家たちを刺激し、20世紀初頭のヨーロッパでは、次々と新しいミステリー小説が発表されるきっかけとなりました。
モーリス・ルブランが著した、変装の名人であり神出鬼没な「怪盗紳士アルセーヌ・ルパン」と、「オペラ座の怪人」で有名なガストン・ルルー作で18歳の新聞記者ルールタビーユが活躍する「黄色い部屋の秘密」の2作が、1907年に同時に刊行されます。続いて1911年には、パリ大学で医学を専攻したマルセル・アランと元弁護士のピエール・スーヴェストルの二人により生み出され、「犯罪王」「恐怖の支配者」「捕まえられぬ者」などの異名を持ち、世に恐れられる『怪人ファントマ』のシリーズ第1作を発表しています。
そのほか、シャンソニエ(シャンソンや話芸を聴かせる芸人)や新聞売り、潜水夫ほか職を転々としたのちに人気が出たレオ・マレの『探偵ネストール・ビュルマ』シリーズ、ジョルジュ・シムノンが産んだ名警視『ジュール・メグレ』など、善と悪、光と闇、住む世界は違っても、彼らは読者にとってまぎれもないヒーロー。1996年にフランスから発行された著名人切手帳「フランス推理小説の主人公たち(Heros francais du roman policier)」に勢揃いしたそのデザインは、どこかフランスのエスプリを感じさせてくれる、洒脱な魅力に満ちています。
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ホームズやルパンに続き、1920年代から30年代にかけてはいわゆる「推理小説黄金時代」を迎え、後世に残る名探偵たちが続々と登場します。ベルギー人作家ジョルジュ・シムノンが1929年に創り出した、パリ警視庁の名警視『メグレ警視』、自身も現役弁護士であったE・S・ガードナーが生みだした弁護士『ペリー・メイスン』、さらには、アメリカの人気作家レックス・スタウトが発表した、美食と蘭をこよなく愛する美食探偵『ネロ・ウルフ』、ミステリー界の帝王といわれるエラリー・クイーン(従兄弟同士の二人、フレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニング・リーの共同ペンネーム)が、シリーズで登場させた探偵『エラリー・クイーン』など、推理小説ファンを魅了するキャラクターが類まれなる天分をいかんなく発揮しています。
1979年、イタリア半島中部に位置するサンマリノ共和国より発行された「推理小説の主人公たち」切手では、これらミステリーの主人公たちが一堂に会し、推理小説ファンの注目の的となりました。ミステリーファンならば垂涎の豪華メンバー、その競演を切手でも楽しんでみてはいかがでしょうか。
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