趣味・教養

2009.03.25
チェコスロバキアの切手というと、切手愛好家の中では「凹版印刷」というキーワードが頭に浮かびます。切手の偽造を防止する目的で発達した凹版印刷技術は、一方で熟練の技巧に裏付けられた緻密さと美しさを実現しました。チェコの切手は、その凹版印刷技術で単なる切手を超えた小さな美術として、常に話題を集めています。今回はこのチェコ切手から、プラハ美術館収蔵の価値ある作品を再現した逸品をご覧いただくことにしましょう。
「切手」は紙幣同様、偽造されると発行国や地域が大きな損害をこうむるもの。そこで、偽造防止の観点から、製造にあたっては昔から高度な印刷技術が利用されてきました。その技術のひとつが「凹版印刷」です。
凹版印刷は、騎士道華やかなりし頃のヨーロッパ、15世紀頃に発明されました。騎士たちの鎧や兜に飾り模様を彫り込むことが流行していた当時、金細工師たちが彫り込むデザインの見本を示すために、発達したといわれています。
ここで、簡単に凹版印刷の原理をご説明しましょう。まず、表面が平らな銅などの金属の板(版面)に、「ビュラン」と呼ばれる専用の彫刻刀で画線を彫ります。次にその版面全体にインクを塗り、表面部分のインクを拭き取ると、ビュランで彫った溝の部分(画線)だけにインクが残るため、そこに印刷用紙を乗せ上部より強い圧力をかけることで、印刷用紙にインクが食い込み印刷が完了する仕組みになっているのです。
紙幣と同じく、繊細な線の表現で図柄を描く凹版印刷の切手は、面積が小さいこともあり、彫る人間の熟練した技量が必要不可欠です。そのため、手間と製造コストも高くなり、残念ながら凹版切手の発行は減少傾向にあります。その中にあって、北欧のスウェーデンとともに伝統技術を守り続けているのが、チェコとスロバキアなのです。
1966年~2004年までに164種類も発行された「プラハ国立美術館」の収蔵品を描いた美術切手シリーズ。これは、アールヌーヴォースタイルを確立したアルフォンス・ミュシャ、マックス・シュヴァビンスキーなどチェコ出身の有名画家から、ピカソ、レンブラント、喜多川歌麿といった多彩な顔ぶれの名作を、見事に凹版印刷で再現しています。凹版ではインクが盛り上がって印刷されるので、見た目だけでなく手触りも立体的。切手でありながら、歴史あるプラハ美術館の収蔵品そのものを見学しているような、重厚な質感をお楽しみいただけます。
その小さなスペースの中に、珠玉の技術と芸術を兼ね備えたチェコスロバキア美術切手。コレクションに加えて、あなただけの「展覧会」を開いてみてはいかがでしょうか。
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