趣味・教養

2008.04.03
「見返り美人」「月に雁」といえば、懐かしい思い出がよみがえる方もいるのではないでしょうか…?今回は昭和20年代に始まった「切手趣味週間」の 記念切手から、浮世絵をモチーフにした切手をご紹介しましょう。子どもから大人までを巻き込んだ切手蒐集ブームの立役者となり、海外の切手にも影響を与え た名作ばかりです。今年も4月18日から「切手趣味週間」が始まります。
日本[菱川師宣「見返り美人」5円]
発行日:1948年11月
切手のすばらしさを一般の人にも広めたい、趣味として集めてもらいたいと始まった切手趣味週間。その第2回に発行された記念切手が「見返り美人」で す。67ミリ×30ミリという縦長の印面にスリムな見返り美人の姿を収め「切手は小さな芸術品」と改めて認識させたことでも有名なこの切手は海外でも反響 を呼びました。発売日には郵便局に行列ができ、学校を休んでまで並ぶ小中学生もいたようです。150万シートが用意されましたが、ほとんどの郵便局でその 週のうちに売り切れてしまいました。
原画は浮世絵美人画の創始者である菱川師宣。女性が歩みの途中で見返る様を描いたのは、流行の帯の結び方と、菊と桜を刺繍した着物を見せるためと言われています。
日本[歌川広重「月に雁」8円]
発行日:1949年11月
続いて第3回に発行されたのが「月に雁」。満月をかすめて空から舞い降りる3羽のマガンを描いた歌川広重の花鳥版画も、縦長の印面を活かした構図と なっています。人々に衝撃を持って迎えられたこの2枚の切手のサイズ(今もって、日本で発行された切手の中でNo.1の大きさ)は、実は前年に新しくなっ た「取引高(とりひきだか)税」用の1万円印紙の目打ち機を利用して作られたものなのです。限られた予算と設備で、斬新な美しい切手を作り出そうと考えた 末のアイディアだったのですね。
日本[喜多川歌麿「ビードロを吹く娘」10円]
発行日:1955年11月
次に切手ファンの心を捉えたのが昭和30年の「ビードロを吹く娘」でした。高さは「見返り美人」に及びませんが、横幅がワイドになり、何よりグラビ ア多色印刷機の性能による色の美しさが話題になりました。最近のデジタル家電で言うフルハイビジョン的な衝撃であったかもしれません。
美人画の大家、喜多川歌麿が描くみずみずしい娘。彼女が吹いている「ビードロ」は、息を吹き込むと「ポッピン」と音の出る、ガラスの弾力を利用した玩具です。浮世絵に描かれるくらいですから、当時非常に人気があったことが偲ばれます。
こうして大型で「浮世絵」などの日本の美術を取り入れた切手というのが切手趣味週間のフォーマットとして確定し、数多くの名作切手を生み出していきました。フランスで発行されている「美術切手」シリーズもこの影響下にあると言われています。
左下の東洲斎写楽画「市川蝦蔵」、右下の鈴木春信画「まりつき」も切手趣味週間の代表作です。1970年代末まで続いた長い切手ブーム。「国立公園」「国定公園」のシリーズは観光の宣伝効果が絶大だったと言われるほど、メディアとしての切手の価値も大きいものでした。
日本[東洲斎写楽「市川蝦蔵」10円]
発行日:1956年11月
日本[鈴木春信「まりつき」10円]
発行日:1957年11月
大人になった今、再び切手コレクションを始めたいという方におすすめの1冊が『さくら』。これは、財団法人日本郵趣協会が年1回発行する日本切手カ タログで、日本最初の竜文切手から現在までに発行された約5000種類の日本切手がオールカラーで採録されています。切手に関する読み物も豊富。お気に入 りをみつけて、子ども時代の切手帳へ1枚、2枚と新しい切手を足していくような楽しみ方もあるかもしれません。