趣味・教養

2008.03.06
懐かしいおとぎ話を描いた「グリム童話切手」シリーズの第2回です。『シンデレラ』『赤ずきん』『眠り姫』など、おなじみの物語は、1812年のク リスマスに出版された『グリム童話集』から世界中に広まりました。親しみ深いストーリーをたどりながら、現代の子どもたちにも絶大な人気を誇る主人公の素 顔に迫っていきましょう。
『狼と7匹の子ヤギ』は明治20年(1887年)、日本で最初に翻訳されたグリム童話。森へ行くお母さんヤギに「誰が来ても扉を開けてはいけない」と言わ れていた子ヤギたちは、チョークを食べて声色を変え、足に粉を塗った狼にだまされてしまいますが、チョークを食べると、本当にお母さんヤギのようなやさし い声を出すことができるのでしょうか?
これは翻訳の際に、ヨーロッパの「チョーク(泥質の石灰岩)」と日本の「チョーク(白墨)」がすり替わったもののようです。当時ヨーロッパの 「チョーク」はマウスウォッシュとして使われていたため、狼も口の中をさっぱりさせることはできたでしょうが、残念ながらノドに良いという効能はないよう です。
西ドイツ[1963年発行社会福祉4種/狼と7匹の子ヤギ]
発行日:1963年9月
『シンデレラ』の類話は、世界中でなんと700以上もあるそうです。「世界最古のシンデレラ」とされているのは、中国の「イエシェン(葉限)」で9世紀中 頃(唐の時代)に書かれたもの。中国で足の小さい女性が美しいとされ、纏足(てんそく)をする習慣が生まれたのもこの頃で「とても小さく、シンデレラの他 にはける女性がいなかった」というガラスの靴のエピソードにもつながっているようです。
また、シンデレラと聞けば誰もが思い出すかぼちゃの馬車やガラスの靴、12時で魔法が解けるというスリリングな設定は、『ペロー童話集』を著した シャルル・ペロー(1628-1703)による創作なのです。グリム兄弟の童話集は、ペローの影響を受けているものが多く、『シンデレラ』もそのひとつ。 しかし、ルイ14世に仕えた宮廷人で詩才にも恵まれたペローが乳母の寝物語をもとに作り上げた『シンデレラ』と、学者として民話を採集したグリム兄弟の 『シンデレラ』には、いくつかの違いがあります。
この児童福祉切手は、グリム兄弟版のストーリーに忠実に作られています。舞踏会の日、シンデレラに美しいドレスを届けるのは、実母のお墓のそばに植 えた木にやってくる白い小鳥。そしてシンデレラは、舞踏会の帰りにガラスではなく金の靴を落とします。みなさんがよく知っている有名なシーンも、初版では まったく違っていたようです。
西ドイツ[1965年発行社会福祉4種/シンデレラ]
発行日:1965年10月
魔女の呪いによって100年も眠り、王子様のキスで目覚めて結ばれる『眠り姫』のロマンチックなストーリーは『ペロー童話集』にも収録されており、ペロー は「金持ち・ハンサム・優しい夫を探してしばし待つのは当たり前のこと。(中略)結婚は遅れたところで幸せなことに変わりがなく、待つことで失うものもな いと、この話は教えてくれる」と教訓を添えています。ただし「女性は熱い思いで結婚に憧れるものだから、女たちに向かってこの教えを説く力も勇気も私は持 ち合わせていない」と締めくくっているのですが。
西ドイツ[1964年発行社会福祉4種/眠り姫]
発行日:1964年10月
さて、王子様が眠り姫を助け出した後の展開にあたる右下の切手をご覧下さい。実はグリム兄弟がこの物語を記す際「王女が眠りについた後、城じゅうに 眠りが広まり、かまどの火も眠り、調理場でへまをした弟子の髪をつかんだコックも手を離して眠り込んだ、そして王女とともに目覚めたとき、再び弟子をどや しつけた」というエピソードを盛り込んでいたのです。このシーンを取り上げたことに、作画者のユーモアが感じられませんか?