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趣味・教養

切手~小さな四角の世界~

2008.01.17

郷土玩具を描いた年賀切手

毎年12月に発行される、翌年の干支を描いた「年賀切手」。今回は昭和35年から43年にかけて発行された、干支にちなんだ郷土玩具の年賀切手をご 紹介します。地元の自然素材を活かした素朴な玩具は、どれもさすが「手仕事の日本」と思わせるものばかり。全国各地の歴史や文化、職人の技術の粋が、小さ な世界にぎっしり詰まっています。

郷土玩具と鎖国の関係

郷土玩具の多くは江戸時代に生まれています。当時は鎖国や大名割拠などの影響で、外国はおろか国内交流も容易ではあり ませんでした。郷土玩具は、そうした時代を背景に、その土地独特の伝統や風俗などを反映してつくられた、庶民による、庶民のための玩具のことです。主な材 料は木、竹、紙、布、糸など。『日本玩具辞典』によれば、明治開花以前から日本に存在したものだけを使ってつくられていたとされています。

現代のおもちゃと異なる点は、子どもたちの単なる遊び道具としてだけでなく、その多くに信仰や祈りが込められていたということ。そこで、まずは各地の郷土玩具を描いた切手をピックアップしてみました。

“魔除け”や“縁起物”としての玩具

日本[昭和37年用「出雲の『張子の虎』」]
発行日:1961年12月15日

島根県の出雲地方では、子どもの健やかな成長を願い、魔除けとして張り子の虎を飾る古くからの風習があります。張り子 とは、粘土でつくった型に濡らした和紙を重ねて貼り、乾燥させて取り出し彩色したもの。切手の虎は、松江の名工、荒川亀齋(あらかわ・きさい)の原型から つくられたといわれています。迫力ある顔つきといい、四肢の踏ん張り具合といい、躍動感にあふれた見事な職人技ですね。

日本[昭和36年用「会津若松と盛岡の『赤べこと金のべこっこ』」]
発行日:1960年12月20日

写真の丑(うし)は、福島県の「赤べこ」と岩手県の「金のべこっこ」。「べこ」とは東北弁で「牛」、「べこっこ」は「子牛」のことです。

ゆらゆら揺れる首の動きがユーモラスな「赤べこ」。その歴史は遡ること400年、当時の会津藩主、蒲生氏郷(がもう・うじさと)が下級武士の資にな るようにと京都から職人を招き、その技法を習得させたのが始まりとか。赤を基調とした「赤物」には疫病を払う魔除けの効果があるといわれ、縁起物として今 も人々に親しまれています。

一方の「金のべこっこ」は、南部藩時代に砂金の産出で知られた岩手県盛岡市に伝わる張り子です。砂金を子孫に残そうと牛の背に積んで運ぶ姿を模したもので、牛まで砂金色に塗られているところが何とも豪華。金運を招くといわれ、今も地元では愛されている玩具のひとつです。

日本[昭和41年用「花巻の『しのび駒』」]
発行日:1965年12月10日

「忍びの駒」は稲藁でつくられた素朴な馬人形で、岩手県花巻地方では縁結びや子孫繁栄、五穀豊穣の祈願に古くから用いられてきました。その昔、里人は人目を忍んで裸の稲馬を神社に供え、願いが成就すると美しい布や鈴で飾り、お礼参りをしたそうです。

日本[昭和43年用「宮崎の『のぼりざる』」]
発行日:1967年12月11日

宮崎県延岡では内藤藩時代、農作物を食い荒らす猿を退治してから子どもの疫病が蔓延し、人々は猿のたたりと恐れていま した。そこで武士の妻が手内職でつくっていた「のぼりざる」を庭先に立てて供養したところ、疫病はぴたりとおさまったとか。以来延岡では子どもの立身出世 や無病息災、五穀豊穣を願い、端午の節句に「のぼりざる」をこいのぼりと一緒に揚げるのが慣わしとなっています。

経済振興目的の工芸品としての玩具

昭和初期に柳宗悦(やなぎ・むねよし)や濱田庄司らにより民芸運動が起こると、全国に伝わる郷土玩具は工芸品として注目され、地域の経済振興に貢献してきました。

日本[昭和35年用「金沢の『米食いねずみ』」]
発行日:1959年12月19日

「米食いねずみ」は加賀百万石の石川の地に天保時代から伝わる、からくり人形の一種。竹のバネを押すと頭と尻尾が下がり、愛らしい姿で米をついばみます。その巧妙な動きは世界の玩具愛好家も一目置くほど。子年の今年は、さらに注目を集めそうです。

日本[昭和46年用「新潟県新井市(現妙高市)の『イノシシ』」]
発行日:発行日:1970年12月10日

長野県との県境に広がる新潟県妙高市は、冬になると2~3mもの雪が積もる豪雪地帯。出稼ぎに出る代わりに冬期の副業 として始められたのが「すげ細工」です。来るべき冬に備え、すげは夏の間に刈って太陽の下でゆっくりと干し、半年間保存したものを使います。すげはこうし た玩具のほか、雪国の必需品「すげ笠」などにも用いられ、この土地に暮らす人々の生活を支えています。

切手の猪は、すげではなくウリの樹皮を剥いで束ねたもの。これもすげと並ぶこの地方独特の細工です。

日本[昭和44年用「米沢の『笹野彫』」]
発行日:1968年12月5日

「笹野一刀彫」は山形県米沢市笹野に1200年来伝わる玩具。17世紀に時の将軍、上杉鷹山(うえすぎ・ようざん)が 豪雪に閉ざされる冬場の副業として指導、奨励したことで一躍知れ渡るようになりました。その最大の特長は、1本の木を切り離すことなく薄く削り上げ、カー ルした木皮を活かしてさまざまな動物を巧みに表現していること。切手の鶏もくるりと曲線を描いた尾が美しいですね。

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