趣味・教養

2007.10.18

フランス[ポール・ゴーギャン『天使と戦うヤコブ』]
1998年12月5日発行
『天使と戦うヤコブ』は、ポール・ゴーギャン(Eugène Henri Paul Gauguin、1848-1903)によって描かれた作品です。これはブルターニュ地方に残る古い儀式であるパルドン祭を見て描いた光景で、右端にいる 神父の説教を聞いた後の、ブルターニュの女達の心に浮かんだ幻影を描いています。幻想のテーマは、タイトルにもなっている『旧約聖書』のなかの「創世記」 に書かれたヤコブと天使の格闘です。
ヤコブとはイスラエルの族長で、神と戦いに勝ったために「イスラエル(神と戦う人の意)」と名乗ることを許されました。このことから彼と子孫たちは イスラエル人と呼ばれるようになったといいます。この『天使と戦うヤコブ』の話は、宗教的、神話的、民俗学的な見地からさまざまな解釈がなされているテー マで、ロマン主義の代表的画家ドラクロアも、同じ題材を描いています。
ゴーギャンは日本の浮世絵的な空間の単純化を強く意識していたそうですが、この作品は特に浮世絵の影響が顕著です。影響を受けたのは構図だけでなく、ヤコブと天使が戦っている姿は「北斎漫画」の相撲の図を参照して描いたと言われています。

フランス[『ソロモン王の審判』(ストラスブール大聖堂)]
1985年4月13日発行
ソロモン王は、紀元前10世紀の古代イスラエル王国の王。『旧約聖書』の「列王記」によると、父ダビデの跡を継ぎ3代目の王となったソロモンは、主に対する信仰と従順によって卓越した知恵と英知を発揮し、イスラエルをその黄金期に導いたといいます。
ストラスブール大聖堂にあるステンドグラス『ソロモン王の審判』は、ソロモン王の名裁きとして有名な次のエピソードをモチーフにしています。
あるとき、ふたりの遊女がひとりの子どもを巡り、互いに自分の生んだ子だと言い張ってゆずりませんでした。するとソロモン王は側の者に剣を持ってこ させ、「その子どもをふたつに切って、ふたりに半分づつ与えよう」と言ったのです。一方の女は「どうぞ断ち切ってください」と言い、もう一方の女は「訴え を取り下げるから子どもを切らないでほしい」と言いました。そこでソロモンは「子どもを切らないでほしいと言った女に与えなさい。子どもの命を第一に考え た女こそ実の母親だ」と判決を下したのです。

フランス[ウィサンブール『キリスト像』]
1990年6月16日発行
右の切手のモチーフは、9~11世紀につくられたと推定されているキリストの頭部を描いたステンドグラス。これは、フランスのアルザス地方ウィサンブールで発見されたもので、現存する最古のステンドグラスの破片といわれています。
ステンドグラスはその発生の歴史から、宗教的建物と密接な関係がありました。なぜなら、建築物の中にガラスが 入ったのは礼拝堂が初めてだと考えられているからです。信者は礼拝堂から東の空に向かい木戸や窓を開け放って礼拝を行っていましたが、風雨が強い日は窓を 開けられません。そこで窓にガラスを入れることで、いつでも神との対話、祈りが可能になったのです。時代が進むにつれ、窓ガラスに宗教画が施されるように なっていき、それがステンドグラスへと発展していきます。宗教画を表現したステンドグラスは、文字を読むことのできない信者の信仰を深めるために大きな役 割を果したのです。

フランス[ノートル・ダム大聖堂『聖母子像』]
1964年5月23日発行
次にご紹介するのは、ノートル・ダム大聖堂にあるステンドグラス『聖母子像』をデザインした切手。聖母子像とは、聖母マリアと幼児イエス・キリスト を共に描いたキリスト教の図像のこと。聖母子をテーマにした絵画は、キリスト教を信仰する人々が最も愛して止まない永遠のテーマで、多くの画家によって描 かれています。
ノートル・ダムとはフランス語で「我らが貴婦人」を意味し、聖母マリアを指す言葉。その名の通りノートル・ダム大聖堂は、聖母マリアに捧げられていて、建物内にはあちらこちらにマリアを描いたステンドグラスが配されています。

フランス[ルーベンス誕生400年『聖母子』]
1977年11月発行
右は、バロック絵画の代表的画家でもあるルーベンス(Pieter Paul Rubens、1577-1640)が描いた『聖母子』。ルーベンスは、それまでの古典表現の枠から飛び出し、躍動感あふれる大胆な画風で、肖像画や宗教 画、神話の絵画を中心にその時代の絵画シーンを牽引しました。彼は数多くの宗教画を描きましたが、そのなかでも有名なのは、『キリストの昇架』。この作品 はアニメにもなった『フランダースの犬』で、画業志望の主人公ネロがひと目見たいと憧れていた絵画としても知られています。

フランス[アングラン・カルトン『アビニョンのピエタ』]
1988年12月10日発行
『アビニョンのピエタ』は、アングラン・カルトン(ENGUERRAND QUARTON、1415-1466)による15世紀フランス絵画の最高傑作。ピエタ(イタリア語で哀れみ・慈悲などの意)とは聖母子像のうち、死んで十 字架から降ろされたキリストを抱く母マリアの彫刻や絵の事を指し、多くはこの絵のようにマグダナのマリア、聖ヨハネなどとともに描かれます。
『アビニョンのピエタ』では、聖母マリアを中心にしてマグダラのマリアと聖ヨハネがキリストの遺体を囲み、絵の左隅にエルサレムの街と絵の寄進者で ある白い僧服の男が描かれています。寄進者が見た幻影として描かれているこの絵からは、3人が共有する悲しみが静かに伝わってきます。

フランス[ジョルジュ・ド・ラ・トゥール『聖トマス』]
1993年9月9日発行
トマスはキリストの弟子である12使徒のひとりで、非常に疑り深い人物でした。トマスはキリストが生き返ったということを他の使徒たちから聞かされ ましたが、自分はその場に居合わせなかったため、ひとりキリストの復活を信じようとせずにいました。そこに磔刑後のキリストが現れ、蘇ったことをトマスに 示し、彼はやっと納得したのです。このことは“トマスの不信”や“トマスの懐疑”として、しばしば絵画のテーマにもなっています。その後、彼はインドに伝 道し、異教徒の兵士の槍で殺されたとも伝えられています。
一般的に宗教画では、人物とともにそのキャラクターを示すアイテム(美術用語で「アトリビュート」と言います)が描かれています。それによりひと目 で「これは○○○を描いた絵だ!」とわかるのですが、この絵の場合、槍が描かれていることによって聖トマスであることがわかります。

フランス[ジャン・グージョン『福音史家ルカ』]
1999年2月13日発行
次に紹介するのは、16世紀フランス・ルネサンスの建築装飾の彫刻家である、ジャン・グージョンによるレリーフ『福音史家ルカ』。ルカは、新約聖書 の『ルカによる福音書』および『使徒行伝』の著者とされる人物で、伝統的キリスト教教派では聖人とされています。彼はシリアのアンテオケアに生まれたギリ シャ人の医師で、使徒パウロの協力者および随従者として活躍しました。文学的教養が高く、『ルカによる福音書』および『使徒行録』は、新約聖書中で最も美 しく格調の高いギリシャ語で書かれています。
『ルカによる福音書』にいきいきと描かれたイエスの幼年時代の物語や聖母マリアの姿から、ルカを画家とする伝承が形成されました。またルカは、医者 の保護聖人とされ、福音史家のアトリビュートである巻紙のほかに、しばしば外科医の器具を入れた袋をもった姿で描かれます。ルカの名を冠した医者や医学者 の団体、病院が世界各国にあるのはこのためです。