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趣味・教養

切手~小さな四角の世界~

2007.10.11

日本の昔ばなしを描いた切手1

 
今回ご紹介するのは、1973~1975年に発行された「昔ばなしシリーズ」切手。日本画家、洋画家、童画家など、さまざまなジャンルの画家が原画を担当したこのシリーズは、日本で初めて昔ばなしを題材にとった切手となりました。

時代とともに変わっていく昔ばなし

小さい頃に読み聞かせてもらった昔ばなし、今、読み返してみると記憶と違っていたなんてことはありませんか? それは、昔ばなしのほとんどが口伝え で、土地や時代によって内容が少しずつ変わっているから。最近の絵本では、物語の細部が省略され単純な話になっていたり、残酷な結末がハッピーエンドに改 変されていたり、なんてこともあります。昔ばなしのストーリーには、その時代や土地の風習、社会情勢、人々の価値観などさまざまな背景が隠されています。 できるかぎり、本来のかたちで未来に語り継いでいきたいものですね。

『おむすびころりん』の元になった『ねずみの浄土』

みなさんは、『ねずみの浄土』のお話を知っていますか? これは、おじいさんが地下にあるねずみの楽園を訪ねて、宝物をもらって帰ってくるというお話。聞いたことがないという人のために、簡単にあらすじをご紹介しましょう。

山仕事に行ったおじいさんは、お弁当を食べようとしたときに、おにぎりを穴に落としてしまいます。穴の中から出てきたねずみが、おじいさんにおにぎりを返してくれたのですが、おじいさんはその半分をねずみに分けてあげます。

ところが2個目、3個目のおにぎりも穴に転がりこんでしまい、とうとうおにぎりはなくなってしまいました。するとねずみはおじいさんを地下に案内し、ねずみの世界に連れていきます。ねずみの国では、大勢のねずみたちが餅をつき、おじいさんにごちそうしてくれました。

ここまで聞くと「この話知ってる!」という人も多いのでは。実は『ねずみ浄土』は、『おむす びころりん』というタイトルで子ども向けに書き直されているため、今では後者のタイトルのほうが広く知られています。また、細かい部分も地方によって違い があり、おじいさんがもっているおにぎりは、関西より西では団子の場合が、東北地方では豆の場合が多いようです。

このあとおじいさんは、おにぎりのお礼にと宝物をもらって家に帰ります。それを聞いた隣の家のおじいさんはうらやましがり、真似をしてねずみの国に 行きますが、欲を出したばかりに失敗してしまいます。善良な人間が恵みを得て、性悪な人間がその真似をするが失敗して罰を受ける、というパターンの話は、 この他にも『こぶとりじいさん』や『花咲かじじい』など数多くあります。現在のように活字やメディアが発達していなかった時代、昔ばなしは子どもたちの道 徳観や価値観を育むための大切なコミュニケーションツールだったのかもしれません。

■切手について

原画:黒崎義介

日本[ねずみの浄土 3種]

1975年4月15日発行

本当はずる賢い?『一寸法師』

次はみなさんもよくご存じの『一寸法師』。現在昔ばなしとして知られているこの話は、室町時代に作られた物語集『御伽草子』に収録されているものが 元になっています。『御伽草子』とは、大衆向けに書かれた短編が300~500編収められていた物語集。ちなみに、『物くさ太郎』や『浦島太郎』もこのな かに収められています。

『御伽草子』のなかの『一寸法師』は、みなさんが知っている話と大まかなあらすじは同じですが、細部が微妙に違っています。

たとえば、一寸法師がおじいさんとおばあさんの家を出るシーン。一般に知られている話では、一寸法師は「武士になるために京に行きたい」と旅に出ます。

ところが『御伽草子』では、おじいさんとおばあさんがいつまでも大きくならない一寸法師を気味悪く思い、それを察した一寸法師は自ら家を出ることを決意するという話になっているのです。

■切手について

原画:滝平二郎

日本[一寸法師 3種]

1974年6月10日発行

また、一寸法師が京に出た後、鬼退治をするまでの過程にも少し違いがあります。
一寸法師は京に出た後、大金持ちの宰相殿という人物に気に入られ従うことに。そこで宰相殿の娘を見初め、妻にしたいと思いますが、小さな体ではそれも叶わ ないと一計を案じます。娘が自分の米を奪ったと嘘をつき、宰相殿が娘を見捨てるように仕向けるのです。こうして策略のもと娘を手に入れた一寸法師は、娘と ともに旅に出てたどり着いた島で、鬼に出会い見事に退治します。

このように『御伽草子』では、一寸法師がより知略にすぐれた人物として描かれています。現在の『一寸法師』と違いを比べてみるとおもしろいですね。

切手トリビア~日本の昔ばなし編~
かぐや姫は実在した?

日本最古の物語とされる『竹取物語』。『かぐや姫』のタイトルでも知られるこの話は、「あるところにおじいさんとおばあさんが……」で始まる昔ばなしと違い、登場人物の名前がはっきり明記されているのが特徴です。

竹取の翁であるおじいさんの名前は「さぬきの造」とあり、「讃岐造(さぬきのみやつこ)」つまり讃岐村の長であることがわかります。古代では、土地 の名前はその地の豪族の姓からとりましたから、おじいさんは讃岐氏であったことが想像できます。『古事記』を調べると、第九代開化天皇の孫として「讃岐垂 根王(さぬきたりねのみこ)」の名前が載っています。さらには、この讃岐垂根王の姪に「迦具夜比売命(かぐやひめのみこと)」という名を見つけることがで きるのです。ここまで一致すると偶然とは言いがたいですね。

また、かぐや姫に求婚した5人の貴族たちもモデルである人物が特定できることから、『竹取物語』は実在の人物をモデルに貴族社会や体制を批判するために作られた物語ではないかと言われています。

■切手について

原画:森田曠平

日本[かぐや姫 3種]

1974年7月29日発行

 

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