趣味・教養

2012.01.16
未曾有の大災害となった2011年3月11日の東日本大震災。その余波は興行にも深刻な影響を与え、原子力発電所の事故の経過がどうなるか分からないという緊迫した状況の中で、予定されていた来日公演をキャンセルしたアーティストも多かった。
シンディ・ローパーが、昨年のジャパン・ツアーのため来日したのは、ちょうど震災当日の11日。周囲からは帰国を勧める声が多かったにも関わらず、「私にできることは音楽。私の歌で少しでも勇気を、少しでも元気を与えることができるなら、それが私の仕事と思っています」というコメントを発表し、自らの意思でコンサートを敢行した。それからちょうど1年を経た3月というタイミングで、再び彼女の来日コンサートが行われることとなった。

シンディ・ローパーは、1983年に『シーズ・ソー・アンユージュアル』で、ソロ・アルバム・デビュー。それ以降の彼女の足跡を見てみると、順調にアーティストとしての栄光を手にしてきたように映る。しかしそれよりも前のバンド時代の彼女は、声帯を痛めて音楽活動を休止したり、商業的な成功を収めることができず、生活の苦労を味わっていた時期があったことも、プロフィールで明らかにされている。
ボーカリストとしての彼女は、確かにスターとしての華を持っている。しかしそれだけではない。彼女の表現の核にはヒューマンな温もりがある。栄光に満ちたスターダムに登場する前の苦闘を自らの音楽の糧とすることで、弱者の立場への卓越した共感能力を持つがゆえのものだ。
昨年の来日直前には、ブエノス・アイレスの空港でフライトの遅延や欠航に怒った客をなだめるため、急遽歌い始めたというエピソードも伝えられている。親日家としても知られる彼女だけに、今回の公演では、日本への温かい思いを存分に披露してくれるだろう。