食・グルメ

2011.12.12
ラーメンの種類は星の数ほどあれど、日本を代表するご当地ラーメンといえば、札幌、東京、そして博多をおいて他にないでしょう。いま挙げた3大ラーメンは、それぞれ明確な特徴を持っていますが、なかでも博多ラーメンの個性は群を抜いています。
そして、「博多ラーメン」という呼び名と同じくらい有名なのが「長浜ラーメン」。このふたつは、いったいどんな違いがあるのでしょうか。今回はそのルーツに迫ってみましょう。
博多ラーメンというと、豚骨スープとストレートの細麺。そして紅ショウガやきくらげなどのトッピングを思い浮かべます。特徴は乳白色の濃厚なスープ。このスープの濁りととろみは、豚骨を強火でグラグラ沸騰させることで、ゼラチン質が溶け出しているため。しかし、もともと博多で発祥したラーメンは、東京ラーメン同様に支那そばがルーツ。鶏ガラに少量の豚骨を加えて作られたもので、スープも透き通ったものだったようです。タレも、しょう油が主流でした。
昭和16年頃になると、博多駅、天神などを中心に、多くの屋台が軒を並べるようになります。その多くはうどんの屋台でしたが、戦後には徐々に豚骨のみでスープをとったラーメンを提供する屋台が増えていくのです。博多といえば多くの人が思い浮かべる屋台がズラリと並んだ光景は、このころ作り上げられたものだといえるでしょう。
しかし、当時の豚骨スープは、まだ清湯(澄んだスープ)でした。それがなぜ現在のような白濁したスープになったのか。これにはいくつかの説があります。
これぞルーツ!?
その1
久留米にあったうどん屋台の店主が、長崎チャンポンの濃厚なスープに着想を得て豚骨をグラグラ炊き出した白いスープを開発した。
その2
戦後、ある屋台の店主が、戦中に中国で食べたラーメンを思い出して白い豚骨スープを作る。中国で食べたラーメンは、アイヌ料理のスープを元に考案されたものだった。
その3
とあるラーメン店の店主が、うっかりスープの火をつけたままで外出。グラグラと煮え立ってしまい、後に残ったのは白濁したスープ・・・。偶然が生み出した産物であった。
沸騰させた豚骨からは髄のエキスが溶け出し、さらに脂が乳化して、こってりまろやかな味わいのスープになります。使っている骨の部位や炊き出し時間によって、味も風味も異なるので、そこは個性の出しどころ。こうして長時間かけてダシをとったスープに、塩や薄口しょう油のタレで味付けたものこそが、「博多ラーメン」のベースになるのです。
博多ラーメンといえば、「替え玉」が当たり前になっていますが、実はこのシステム、普通の博多ラーメンとはちょっと違う背景を持つ「長浜ラーメン」が元になっているといいます。
長浜ラーメンとは、中央区長浜で供されていたラーメン。現在の長浜地区はオフィスやマンションが立ち並んでいますが、もともとは魚市場を中心に発展してきた町。昭和30年頃から、市場で働く人たちのために安くておいしい食事を提供する場所として、長浜に屋台が並ぶようになります。
セリの合間に飛び込んでくる魚河岸の人たちはとても気が急いていて、ラーメンを注文してから出すまでのスピードを求めました。もともとは中細麺を使っていたところ、ゆで時間を短くするためにどんどん細い麺へと変化。さらに麺が細いために伸びやすいので、1度に提供する量を少なくし、麺のお代わりをする替え玉というシステムを生みだしたのです。
替え玉を前提としているので、おのずとスープは濃い目になりました。
「極細麺」「替え玉」「濃厚スープ」というのが、長浜ラーメンならではの特徴。当初は「長浜ラーメン」ではなく「市場ラーメン」と呼ばれていて、博多ラーメンとは一線を画する、独特の食べ物だったようです。現在「長浜系」と呼ばれる店は、長浜の魚市場の屋台にルーツを持っている店です。
やがて博多ラーメンのほとんどが、長浜ラーメンと同じ「極細麺」「替え玉」「濃厚スープ」を取り入れるようになっていきました。いまではラーメンそのものに「長浜」も「博多」も大きな違いはないといわれています。替え玉を生み出し、取り入れたこの土地のラーメンは、サービス精神旺盛な博多っ子の心意気そのものといえるかもしれません。
いまでは博多ラーメンとひとくくりにされてしまうことが多い長浜ラーメンですが、替え玉スタイルを生み出したのは長浜ラーメン。そんな長浜ラーメンに敬意を表して、替え玉に至るまでのおいしい食べ方を考えてみたいと思います。
麺のゆで方
長浜ラーメンを扱う多くの店で、「生(粉おとし)」「ハリガネ」「バリカタ」「カタ」「普通」「ヤワ」「バリヤワ」といった具合に、麺のゆで加減を細かく指定することができます。
店によっても異なりますが、「生」なら、ほとんどお湯にくぐらせるだけ。ハリガネなら10秒程度。普通だとだいたい1分くらいがゆで時間の目安です。ヤワやバリヤワは、それより長くゆでた麺ということになります。
脂の量
スープの上澄みとなる脂の量を選べるのも、長浜ラーメンの特徴。「ベタ(脂多め)」「普通」「ナシ(脂なし)」といった具合です。麺の固さとあわせて注文するときは、「ベタカタ」「ナシヤワ」といった具合に、脂の量を先にいうのが博多っ子の通例なのだとか。
替え玉
当然のことながら、替え玉をするときにはスープを飲みきらないようにしなくてはなりません。すべてを食べきる2・3口前に、「替え玉!バリカタで」といったふうに注文します。
すると、丼の中身を食べきるころには、替え玉が目の前に置かれるといった具合。スープの温度が下がっていることを考慮して、最初の注文のときよりも麺の固さを1ランク柔らかくするのがツウのやり方です。スープが薄まってしまったときには、「かえし」と呼ばれるラーメンだれを足すと、味が引き締まります。
それぞれの店が完成した味を持ちながら、自分好みに細かくカスタマイズできるのが長浜ラーメンをはじめとする博多ラーメンです。紅ショウガや高菜、ニンニク、ゴマなどを自分でトッピングできる店がほとんどで、味のコーディネイトはさらに広がります。いちばんおいしい食べ方はいったい・・・こればかりは、お気に入りの店に通いつめて自分で見つけるしかなさそうです。