食・グルメ

2008.11.25
ラーメンは、実にシンプルな料理だ。スープに、茹でた麺、それから具、といったように、その存在を構成する要素はさほど多くない。しかし、それらには多くの選択肢があり、どの選択肢を選ぶかによって大きく味が変わってくる。だからこそ、志の高いラーメン店は、スープの原料、麺の茹で方、具の種類などに独自性を持たせ、「この味はこの店にしか出せない」と言わしめるほど高いクオリティの味を提案している。そう、ラーメンという料理は、実にシンプルな構成でありながら、その奥は途方も無く深い。だからこそ、その旨さは千差万別なのだ。
その味の違いを作る重要な要素のひとつが「地方性」である。今回は、それぞれの土地に根付いた個性あるラーメンの中から、更に一歩先を行く「地元食材を上手く取り入れたご当地ラーメン」に着目してみることにした。
ここでは、『メイン食材にその土地ならではの食材を使うこと』を、ご当地ラーメンのご当地ラーメンたる所以"と定義しよう。こうすれば、ご当地ラーメンという言葉がピンとこないという人でもわかりやすいはずだ。早速、具体例をご紹介するとしよう。神奈川県の三浦市では、昨年"三崎のまぐろ"をより多くの人に知ってもらうべく「三崎まぐろラーメン」なるご当地ラーメンを発表した。スープにまぐろの兜出汁を、具にはまぐろをスペアリブやそぼろにしたものを使うなど、独創性のあるアイディアが光るラーメンだ。
さて、所は変わって、こちらは北の大地。北海道は中標津町(なかしべつちょう)では、当地の名産である牛乳を取り入れた、チャレンジングな「中標津ミルキーラーメン」を提案。まったりとしたコクと味わいは、ラーメン界に一石を投じる新味と言える。
そして、昔から養鶏が盛んだった山形県の新庄市では、数十年前から地元で愛されてきた"トリモツ煮入りのラーメン"がある。出汁の利いたこれを「新庄ラーメン」として宣伝したところ、期間限定ながら全国販売のカップ麺になるまでになったのである。
普通のラーメンとは少し変わった歴史やエピソードを持つご当地ラーメンは、他では味わうことができないという希少性の高さも手伝って、地域の活性化にも一役買っていると言えるだろう。
さて、上で紹介したもの以外にも、ご当地ラーメンと呼べるだけの趣を持つラーメンは、各地に存在する。
例えば、高知県の須崎市では、「鍋焼きラーメン」なるものを提供する店が数多くある。これは戦後まもなく開業した「谷口食堂」というラーメン店のアイディアだったという。出前を始めるのを機に、ラーメンが冷めないようにという店主の思いやりから生まれたラーメンで、たちまちその評判は周囲に知れ渡った。月日は流れ、昭和55年に谷口食堂は閉店してしまうが、あの味を未だに忘れられないという多くのファンが鍋焼きラーメンを復活させようと立ち上がり、現在では約40軒あまりの店が提供するまでに復活したのだとか。
最近では、札幌の「みそ」、函館の「しお」、旭川の「しょうゆ」に続く味として生み出された、室蘭の「カレーラーメン」もチェックしておきたい。同じく北海道発の「スープカレー」人気と相まって、流行のきざしを見せている注目株だ。このラーメンが北海道第四の味として定着するよう、今後も見守っていきたい。
最後に、究極のご当地ラーメン情報をひとつ。東京の北千住にある「菊や」(※1)というラーメン店では、アイスクリーム入りラーメンを提案している。かなり奇抜なメニューに思えるが、あっさりしたスープとまろやかなアイスクリームは意外に好相性だ。全国の地方には探せば必ずと言っていいほど、それぞれの文化や風習と密接に結びついたラーメンがある。旅行や出張で初めてその地を訪れることになった場合には、ぜひ情報を集めて、ご当地ラーメンを巡る旅を楽しんでみてほしい。
(※1:2008年11月現在の情報)