年金・保険・法律

2012.01.26
読者の皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は、東日本大震災、アラブの春、ユーロ危機と日本のみならず世界に目を向けても本当に大変な年でしたね。
今年が皆様にとって本当に良い年となりますよう願っております。
さて、前回の遺言書の活用について(2011.01.27掲載分)のコラムでは入門的な事項を書かせていただきました(まだご覧になっておられない方は、是非上記バックナンバーもご参照ください)が、今回は、遺言がどのような場合に威力を発揮するかということと、公正証書遺言についての具体的手法等にスポットを当てて、3項目のQ&Aをアップさせていただきます。
A1:次のような場合です。
夫婦間に子どもがない場合
相続人は配偶者と親または兄弟姉妹になりますが、配偶者が相手親族と疎遠な場合は遺産分割協議が困難になる場合があるからです。
特定の相続人に特定の財産をあげたい場合
事業を承継する子に事業用財産(たとえば個人事業者が、住宅用ではなく事業用として使用している建物や機械等)を相続させたい場合や、同居して長年自分を介護してくれている子に自宅の土地建物を相続させたい場合等です。なぜならば、子が親の事業を一生懸命手伝ったり、子が親を誠心誠意介護したとしても、その功労は「寄与分」とは認められない場合が多いからです。
相続権のない者に遺産をあげたい場合
たとえば、長年連れ添った内縁の妻や、長年自分の世話をしてくれた長男の嫁には相続権がありませんので、遺言をしておかないと遺産をあげることができないからです。
相続人間の協議が難航することが予想される場合
たとえば先妻との間に子がある場合、その子と後妻とは疎遠である場合が多く、遺産分割が困難になることがあるからです。
相続人の中に行方不明者がいる場合や、成年後見人が選任されている人がいる場合
相続人の中に行方不明者がいる場合、遺産分割協議に際し、不在者財産管理人(弁護士が選任される場合が多い)を家庭裁判所に選任してもらう必要がありますが、不在者財産管理人は、職務上、行方不明者の法定相続分を主張しますので、思うような遺産承継ができなくなるおそれがあるからです。
また、相続人の中に成年後見人として、弁護士・司法書士・社会福祉士等が選任されている人がいる場合は、その成年後見人が成年被後見人である相続人に代わって遺産分割協議に参加することになりますが、成年後見人もまた、職務上、成年被後見人の法定相続分を主張しますので、これまた思うような遺産承継ができなくなるおそれがあると言えます。
相続人資格者が一人もいない場合
相続財産管理人を選任する必要があり、遺産の処理に時間を要します。遺産が、特別縁故者に交付される場合もありますが、そうでなければ最終的には遺産が国のものになってしまうからです。
公益団体等への寄付を考えている場合は、あらかじめ遺贈を承認してくれるかどうか相手先に確認しておく必要があります。
以上が、遺言書を作成しておく必要性が特に高い例です。
A2:公正証書によって遺言をしようという場合、まず自分がどのような遺言をするのかを充分検討して、遺言の要旨を決めなければなりません。
また、証人二人を準備する必要があります。未成年者、推定相続人(現時点で相続が発生した場合に相続人となる者)及び受遺者(遺言により、財産を受け取る人として指定されている者)並びにこれらの直系血族は、証人にはなれませんので、弁護士や司法書士が証人になる場合が多いのですが、適当な人が見当たらない場合は、公証人役場に相談すれば、比較的低廉な料金で証人を紹介してくれます。
司法書士が関与する場合は、遺言者本人から依頼を受けて遺言の要旨の整理、必要書類の取り寄せ、公証人役場との打ち合わせ等もしてくれますし、また遺言の証人になることもあります。
A3:この場合、もし遺言をしておかないと、将来お二人のうちどちらかが亡くなった場合、残った人と、普段付き合いのない相手の兄弟姉妹とで遺産分割協議をしなければならなくなり、精神的に大きな負担になりますので、自宅の共有持分を含む一切の財産を相手配偶者に相続させる旨の遺言をしておくべきでしょう(兄弟姉妹には「遺留分」がありませんので、後日権利を主張されることはありません)。
ただ、将来、夫婦のどちらかが亡くなった場合、残された人の遺言は無効(遺産をあげるべき人はもうこの世にいない)になりますので、夫婦の一方が先に亡くなった場合に備え、相手配偶者から相続すべき財産を含めた自分の遺産を第三者に与える(たとえば、自分の兄弟姉妹のうちの誰かに相続させる・お世話になった人に遺贈する等)旨の予備的遺言を加えた遺言書を作成しておいた方が良いでしょう。この場合の遺言の書き方はやや複雑になりますので公証人に相談して文案の打ち合わせをし、必ず公正証書にしておきましょう。公証人手数料は少し高くかかりますが、何度も遺言書を作成しなおす手間と費用を考えれば、かえって安上がりで後々安心です。
渡辺拓郎事務所 代表